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HELLO! 未来 ... ものづくり、あなたの夢かなえます。

「電気電子通信工学の分野」 とは....電気 [Electrical] ・電子 [Electronic] ・通信 [Communications] に関わる技術は、電気産業、エネルギー産業、電子デバイス産業、情報通信産業、計測器産業など、あらゆる産業分野で応用されています。

日本の産業において電気はほとんどの産業に携わり、必要不可欠な分野になっています。農業機械、船舶機器、食品からデバイスの工場設備、建設機械、コンピュータや情報通信機器の全てにおいて電気分野の技術が応用されています。よって電気技術者は全ての産業において必要です。


電 気 [Electrical]
電気機器、エネルギー機器、食品機器、衛生機器、環境浄化機器、福祉機器、AV機器など


電 子 [Electronic]
ロボット、光エレクトロニクス、電子回路、電子デバイス、制御機器、計測器、医療電子機器など


通 信 [Communications]
通信システム、ネットワーク、地球環境探査、衛星通信、プログラミング、ソフトウェアなど

 

電気電子通信工学コースでは、電気・電子・情報通信技術を融合し、環境・エネルギー問題に対応できる技術者を育成します。電気エネルギーシステム系、電子デバイスシステム制御系、通信・情報・メディア系の3つの柱をバランスよく履修できる教育を行っています。

最新更新情報 - What’s New? -

 

最新情報
2023-12-28E-letter / イベント / 記事電気学会制御研究会を開催しました 掲載日:令和5年12月26日 本投稿は八戸工業大学HPの記事「電気学会制御研究会を開催しました」より引用しております。より詳しくはそちらをご覧ください。  12月22日(金)に本学サテライトキャンパス「ばんらぼ」において、電気学会の主催による制御研究会を開催しました。この研究会には、同学会の電子・情報・システム部門における「制御・信号処理の分野横断技術の高度化調査専門委員会」が協賛しており、本学の越田俊介准教授(工学部工学科電気電子通信工学コース)が本委員会の委員長を務めています。 研究会では計9件の研究発表が行われ、主として制御と信号処理の両分野に深く関係したテーマについて、基礎理論から応用技術まで多岐にわたった研究成果が紹介されました。また質疑応答では、当該分野の専門家による様々な観点から、活発な討論が行われました。 [...]
2023-12-12E-letter / イベント / 記事電子情報通信学会東北支部講演会が実施されました 掲載日:令和5年12月12日 執筆:教授 柴田幸司  2023年12月8日(金)の16:10 – 17:40は八戸工業大学工学部・電気電子工学科の4-209講義室にて、誘電緩和分光と光散乱・吸収測定と題し、山形大学理学部の天羽優子先生による電子情報通信学会東北支部の講演会が実施されました。電波や光は共に電磁波の一種ですが、天羽先生は現在、空間を伝搬する数100kHzという低い周波数の電波から光領域にかけた広い帯域(波長域)での、電磁波の物質(誘電体)への入射に対する応答(反射や吸収)特性との関係(複素誘電率(屈折率)等の電気定数と関連付ける誘電体という物質と電波や光との相互作用)を解明する先駆的な理論・実験的検討に従事されています。しかし、これらの関係は電波や光の伝搬、反射(散乱)、吸収を司る支配方程式に従います。その為、この日の天羽先生のご講演では先ず、光・電磁波の物理現象を支配する方程式からの反射・散乱・吸収との関係式を導出した上で、電波・光に対する測定結果を考察して頂けました。聴講者には、光の物理現象を液晶ディスプレイへ応用する研究者や、セラミック材料に対して分光計で特性解析をする研究者等、関連する専門家が多く含まれていた為、講演後は活発な質疑応答が行われました。 [...]
2023-11-16E-letter / イベント / 記事アジア原子力研修生が来学しました 掲載日:令和5年11月15日 執筆:教授 石山俊彦  2023年9月より2ヶ月間にわたり,海外から原子力研究で研修生が来学しました.これは,文部科学省の原子力研究交流制度を利用したものです.  今年度は,Danさん(フィリピン原子力研究所),Okviさん(インドネシア国立研究革新庁)の2名を受け入れました.両名に,本学や日本の印象を書いてもらいました.Danさんは,「八戸工業大学には効果的に学習するために必要なリソースが揃っており,学生に目標を達成するために必要なサポートが提供されている.」と印象を述べてくれました.Okviさんは,「スタッフの温かいもてなしが印象に残った.また,本学で学んだことを自国に持ち帰り,指導に役立てたい。」と述べてくれました.  すでに研修は終了し,両名とも本国に戻られました.2ヶ月間,お疲れ様でした. ※両名の承諾を得て,書いていただいた原文を掲載します. Danさん HIT is a great place to learn. They have the necessary resources for the students to learn effectively. The laboratories are equipped with the necessary instruments and equipment needed for practical applications. The professors are experts in their own designated field. Students are provided with all the necessary support in achieving their goals. Okviさん There is always a first impression when doing something new, from the environment or meeting new people.  My first impression when I arrived at Hachinohe was that the staff was warmly welcomed and accompanied us and adapt here. The HIT environment also looks very cool and comfortable, surrounded by lots of trees.  The first week we were invited to Rokkasho Village where there are many nuclear facilities.  Apart from studying nuclear, we also learn about Japanese culture, which of course is a new life experience. We were also taught by kind and reliable professors about fabricating detectors, weekly lecture about calculations from the Fukushima Daichii accident and so on.  Then we are also given the opportunity to learn on our own, and can carry out self-development which is difficult if done in the office (outside of the training period).  On this occasion I try to add new material that I can provide to students using my facilities, from the reference books available here. [...]
2023-11-15E-letter / イベント / 講座公開講座「うろうろロボットを作ろう」久慈で開催  11月3日「文化の日」、本コースではこの日に合わせ公開講座を企画しており、今年は「うろうろロボットを作ろう」との題材で久慈市中央市民センターにて開催いたしました。  今回の講座では光センサを用いて障害物を回避する自走式のカートが題材で7組の親子に参加いただき、石山俊彦教授による指導の下、電子回路とカート部分を製作しました。参加者はハンダ付け作業には苦労しながらも、無事に全員が時間内に完成しました。参加者は組み上げた回路によって自走するカートに満足していたようです。  本学ではこのような体験型の講座のほか講演型の講座も開催しています。興味がある方は是非ともご参加ください。 八戸工業大学公開講座案内:https://www.hi-tech.ac.jp/study/kouza/ 解説をする石山教授 作業の様子 [...]
2023-10-12イベント / 講演会応用物理学会東北支部講演会 兼 八戸工業大学先端技術工学講演会が開催されました。 日時 2023年9月29日(金) 14時30分 ~ 16時 会場 オンライン・八戸工業大学聴講会場(4-110) 演題 『大学発小型宇宙機および小型ロケットの研究開発~無線通信部分のトピックを中心に~』 講師 福島誠治 氏   鹿児島大学電気電子工学プログラム 教授NPO鹿児島人工衛星開発協議会 [...]
2023-10-11E-letter / イベント / 記事学園祭で学科や研究の展示を行いました 掲載日:令和5年10月11日 執筆:教授 柴田幸司  2023年10月7日(土)および8日(日)は、八戸工業大学の学園祭が行われました。ご存知の通り、2020年2月末からのコロナウィルスの影響により、我々の活動も自粛を余儀なくされ、本格的な学園祭は2020年と2021年に行われていません。因みに2022年は大学の創立記念に関連し、街なか学園祭として実施されました。従い2023年度の学園祭は、八戸工大としては久しぶりの本格的な実施と考えられます。そこで、私も八戸工業大学の一員として、工学部・電気電子通信工学コースでの学びの内容や、自身の研究室の活動状況についてポスターや機器を配置して展示や説明を行いました。当方も3年ぶりでの学園祭でのE科や自身の研究室の内容の展示となりましたが、学科の運営に必要な朝晩の鍵の開け締めや、各教室の開閉、廊下や教室の電灯の点灯・消灯など、新人教員の時に行ったことを久しぶりに再体験しました。自分の所属している組織の宣伝や新しい人材の獲得には、このような地道な仕事の積み重ねが重要と再認識しました。 [...]
2023-08-24E-letter / イベント / 記事変電施設の見学 掲載日:令和5年8月24日 執筆:准教授 越田俊介  8月21日に、本学科の3年生が東北電力ネットワーク(株)上北変電所を見学しました。見学においては、職員の方から変電所の役割や各設備の概要をわかりやすくご説明頂くとともに、県内・県外の各地へ安定した電気を供給するためのさまざまな取り組みについてもご紹介頂きました。また、就職活動を控えた3年生に対し、電気施設での仕事に就くためにどのような知識や技術が必要となるかについても、親身にご説明頂きました。  今回の見学は3年生の授業の一環として実施しましたが、電気電子通信工学コースではこの他にも、東北電力ネットワーク(株)からのご協力のもとで、火力発電所や原子力発電所などの施設見学の機会を毎年頂いております。このように電気電子通信工学コースは、普段の授業では得られない「電気と深く関わる」体験の機会に非常に恵まれた環境です。  施設見学の実施において、終始ご協力を頂きました東北電力ネットワーク(株)の皆様に、心より感謝申し上げます。 ・東北電力ネットワーク株式会社 ホームページ: https://nw.tohoku-epco.co.jp/index.html   ・東北電力ネットワーク株式会社 X(Twitter)アカウント: https://twitter.com/tohoku_network?s=11&t=UZV7FgRxxSzp858MUZEmBA [...]
2023-08-23E-letter / イベント / 記事2023年夏のオープンキャンパス 掲載日:令和5年8月23日 執筆:講師 花田一磨  去る8月5、6日に八戸工業大学夏のオープンキャンパス2023が開催されました。今年度のオープンキャンパスは新型コロナウイルスの影響が大きかった昨年度までと異なり、コースにおける体験授業の時間を少し長くとることができましたので、過去のオープンキャンパスに倣い簡単なロボット製作を行うことにしました(写真1)。  製作したロボットは過去の公開講座で扱ったパペットロボットのマイコンを、Wi-fi通信やBluetooth通信が可能でArduino統合環境でプログラミングができるESP32に変えたもので、スマートフォンで操作できるようになっています。  使用したESP32は電気電子通信工学コースで開講している電子回路IIの授業でも扱っており、使えるようになればいろいろと面白いことができます。参加者の皆さんはこういうものを使ってどんなものを作りたいと思ったでしょうか?こんな風に楽しいものづくりにつながる電気電子情報通信技術に興味を持ってもらえると幸いです(スマートフォンとESP32の接続方法がわからない、というトラブルがあれば花田(hanada@hi-tech.ac.jp)までご連絡ください)。  ところで図1のQRコードはコースのバーチャル見学用に試作した360度写真の動画をアップロードしたyoutubeのアドレス(https://youtu.be/UymWjKg79oI)です。無音で特に動きはありませんが、視点を変えることができますので興味があればご覧ください。 写真1 コースにおける体験授業の様子 図1 バーチャル見学用動画(https://youtu.be/UymWjKg79oI) ・八戸工業大学オープンキャンパスページ(https://www.hi-tech.ac.jp/exam/opencanpu) ・八戸工業大学入試インフォメーション(hi-tech.ac.jp/exam/info) ・八戸工業大学入試部のLINE@アカウント(https://page.line.me/hi-tech) [...]
2023-07-25E-letter / 記事 / 講演会本学卒業生による講演会が実施されました 掲載日:令和5年7月25日 執筆:教授 柴田幸司  2023年7月12日(水)の10:30 -12:00に4-209講義室(電気電子通信工学棟)にて、本学卒業生による講演会が実施されました。講演者の新谷 聖さんは2017年に本学工学部電気電子工学科を卒業後, 旭光通信システム(株)に入社し、八戸事業所で主にJR各社, 大手鉄道会社およびNEXCO各社向けIP通信システムの設計開発に従事しています。本講演では、最初に総務課の小室様より旭光通信システムの業務内容についてご説明があり、続いて新谷さんより、旭光通信システムに入社したきっかけと電気電子情報通信システムのものづくりの魅力、必要なスキルや心構えと取り組みを教授頂くとともに、実際の業務の様子をスライドにて詳細にご説明頂きました。聴講者の本学2年・電気電子通信コースの学生は、八戸市内にある電気電子装置の製造業における先端的な通信システムの設計開発業務について興味深く聴いていました。特に、八戸市内に太陽電池による自立駆動形の監視カメラを設置した事例を興味深く聞き入っていました。 [...]
2023-02-28E-letter / 研究関連 / 記事教材としてのアプリ作成 掲載日:令和5年2月28日 執筆:准教授 越田俊介  今年度、高校生など外部の方々を対象として、筆者の専門分野であるディジタル信号処理に関する授業を何度か実施しました。ディジタル信号処理は計算機の数値演算を基にした技術であるため、コンピュータが不可欠です。そこで、授業を実施するにあたり、受講生がコンピュータを直に操作して信号処理を気軽に体験できるような教材として、信号の生成や雑音除去を実現するアプリを作成してみました。たとえば下図に示したアプリでは、2つの波を重ね合わせた信号を生成し、その時間波形とパワースペクトルをグラフ表示するとともに、音も出力します。なお筆者は研究にてMATLABを利用していますが、現在のバージョンのMATLABではアプリの開発環境が整っており、所望のアプリを容易に作成できます。 コンピュータを利用した信号処理体験の授業の試みは以前から行われていましたが、筆者の知る限りでは、一昔前はアプリ利用ではなく信号処理のプログラム作成を主体としていたように思います。プログラム作成の実習は、プログラミングが得意な受講生に対しては有効ですが、プログラミングが未経験であったり苦手意識を持っていたりする受講生にとっては、信号処理体験の楽しみが半減してしまいます。また、信号処理を勉強する上では基礎理論の習得が非常に重要ですが、基礎理論の理解とプログラミングの両方を扱った実習の場合、基礎理論の理解が疎かになりやすいとも感じています。このような背景から、アプリの利用を主体とした実習は、基礎理論の理解へのハードルを下げる有効な方法の一つになり得ると思います。 [...]
2023-02-01E-letter / 記事新旧技術・価値観の橋渡し  執筆:准教授 佐々木崇徳 投稿日:令和5年2月1日  世の中には次々と新しい技術が登場し、生活が便利になっていく。最新技術によるものもあれば、斬新なアイディアによるものまで、枚挙にいとまが無いほどである。  「便利なツールがあるのなら、それを使えばいいじゃない」 といわれるが、確かに至極合理的ではある。 例えば電子卓上計算機(電卓)、確かに数字を打てば計算結果がはじき出される。その計算結果は正確で、しかも素早い。昔は筆算、暗算が基本で、ちょっと進んでいる人は算盤を使って計算していた。それに比べてなんと効率的であろうか。  しかし、ちょっと待ってほしい。電卓は確かに正確で、その途中計算の仕方を知らなくとも計算結果を得ることはできる。だが、その答えは正しいのか?確かに電卓は計算ミスをすることは無い。しかし、その途中の数字や計算記号など、関数電卓であれば括弧の範囲や関数などが間違っていた場合、さらには入力した数値自体が間違っていた場合、その結果は意図したものとなっているだろうか。昨今大学の定期試験などでも電卓の使用を認める場合も多くなっているが、正答率が上がっていたり、解答時間が短縮されていたりといったことは、実感としてはあまり感じられない。  電卓を使うことで計算過程を考えずに、あるいはおおよそどの程度の答えになるかを予想せずに電卓を打ち、その結果を転記する作業を行っているに過ぎないのでは無いかと疑いたくなる。  そもそも便利なツールというのは、不便な時代を知っている人から見た価値観である。はじめからそのツールが身近にある人に取ってみれば、特段便利というわけでも無く、当たり前のツールである。しかし、不便な時代においては、ツールに頼らずに自身で解決する手段を必死で身につけ、それを使いこなしていた。そこに新いツールで作業が効率化されて、正確かつ高速な作業を可能にしている。  そうはいっても、今筆者のような世代が感じていることは、おそらくもっと前の世代も感じていたことであろう。世代間の考え方や能力の差について、「最近の若者は」という嘆きの言葉は紀元前3000年頃にエジプトですでに言われていたようである。しかしそう言われても5000年間着実に文明は進んでいるわけだから、翻ってみればこういった発言をしている人はその過渡期に於いて、次の世代を心配している一方で、新しいスタンダードに取り残される不安を抱えているのでは無いか、ともとれる。  筆者らは大学で教鞭を執る立場にありながら、常に新しいことを模索するという特殊な仕事をしている。そのような中で、やはりこの新旧の壁に頻繁にぶつかっており、日々学生との向き合い方を模索している。技術と価値観が変遷していくなか、我々は古い価値観を押しつけるのでは無く、古い知識や技術の利点を伝えて、新しい世代がそれを選択して継承してくもらえるような工夫を求められているのかもしれない、と思う今日この頃である。 [...]
2023-01-04E-letter / 記事ComputerGraphics作成ライブラリ 執筆:准教授 神原利彦 投稿日:令和5年1月4日 近年のComputerGraphics(以下CGと略)業界における表現技術の進歩は著しく、Unreal Engine(図1左)やUnity(図1右)といった最新のゲームエンジンを使えば、美麗な3次元CGが簡単に描けるような時代となっている。そんな時代にあっても、筆者は細々とマイナーなCGライブラリを使って研究している。ライブラリとはプログラミングの補助ツールのようなものであり、学生のプログラミング教育の教材として使用されている。単に美麗さを追求する気がないだけと言ってしまえばそれまでだが、無料で使える上に使い勝手が気に入ったせいもあり、筆者は長年使い続けている。今回は、そのマイナーなCGライブラリを2つ紹介する。 図1:Unreal EngineとUnityのロゴマーク 1つ目は、Coin-3Dと呼ばれるライブラリである。そもそも、筆者は最初からこのCoin-3Dを使っていたわけではない。最初に使っていたCGライブラリは、米SGI製のワークステーションコンピュータO2(図2)の上で動作するOpenInventorというものであった。これはSGIが倒産した現在でも生き残っており、TGSという会社が保守・販売をしているのだが、商用ライブラリで高価なため、大学教員ごときが買えるものではない。TGSはSGIの過去の遺産を生かし技術を引き継いで正式なライセンスとしているから高価なのも当然と言えよう。SGIの全盛期には、映画「ジュラシックパーク」のCGがすべてSGIのワークステーションコンピュータで創られたというほどSGIのCG技術はハードウェアとソフトウェアの両面で優れていた。だが、栄枯盛衰が激しい業界なので、やがてハードウェアはnVIDIAやATIに追い抜かれ、ソフトウェアもOpenInventorをオープンソース化しようとして失敗するとかの凋落が続き、最後は倒産してしまった。 図2:SGI製ワークステーションコンピュータO2(オーツー) では、Coin-3Dとは一体何か?実は、OpenInventorのクローン・ライブラリなのだ。TGSとは別の作り手がゼロから書き起こしたコードで創られており、内部の計算構造などはOpenInventorとは全く異なる作り方をしているくせに、関数名はOpenInventorと全く同一の名前でほぼ同一の機能として使えるライブラリなのだ。つまり、やってることはTGSのOpenInventorと同じなのに無料で使える上にライセンス的にも合法ということになる。元々がIRIXというUNIXプラットフォームで動いていたせいもあり、現在でもWindows/Mac/Linuxのどのプラットフォームでも使えるというのが嬉しい。尤もCoin-3D単体では使えず、LinuxやMacであればSoQtが、WindowsであればSoWinが補助的に必要になってくるが、そのあたりの詳細は長くなるので割愛する。何にせよ、OpenInventorを使っていた時代のC++プログラムがCoin-3Dを使えば、全く問題なく動作しCGが表示されるのだ。このCoin-3Dは研究だけでなく、プログラミング教育にも役立てている。マイナーな存在と書いたが、実はFreeCADと呼ばれるCADソフトのプラグインとしてCoin-3Dが使われているらしい。興味のある人は、Inventor Mentorという書籍(図3)を参考にプログラムを書いてみるといい。全ページ英語だが、日本人でもすぐわかるぐらい簡単な表現しか使ってない上に図が多くてわかりやすいので、すぐCGが創れる。 図3:OpenInventorの教科書 「Inventor Mentor」 筆者が紹介するもう1つは、Drawstuffと呼ばれるCGライブラリである。OpenDynamicsEngineと呼ばれる物理エンジンに付属している簡易なCGライブラリで、とにかく軽い。Unreal EngineやUnityがやたら重くて、いくら美麗なCGであってもカクカクした動きでは話にならんという一方で、Drawstuffは、美麗さは無いがサクサク動いてくれるという点が優れている。OpenDynamicsEngineを使う場合だけでなく、別のシミュレーションの3次元的な可視化の研究にも使っている。尤も、あまりにも原色的なので、CGというよりは子供のお絵描き…と言われることもあるぐらいだ。確かに美麗さはないと言って良いだろう。 さて、Coin-3DとDrawstuffのうち、どちらのCGライブラリも細かい仕様がかなり異なる。そのため、どちらかの仕様のつもりでプログラムを書いていたら、実はもう片方の仕様だったなんてことも起きる。Windows動かしてるのに、Macのキー操作してしまった…と同じような感覚である。例えば、表示座標系の仕様が異なっている。Coin-3Dは、水平x軸、垂直y軸、奥行z軸なのに対し、Drawstuffは、水平y軸、垂直z軸、奥行x軸なのだ。そのあたりの2つの仕様の違いを理解し、同じような動きをするように考えてプログラムを書くというのも実に面白い。仕様が違うなら、頭を使って、違うのに合わせてプログラムを書き変えればいいだけのことだ。特にCG描画のプログラムってのは、表示させてみれば、どこがおかしいかは一目瞭然なので、表示された結果をじっくりと観察すればエラーや不具合などがわかるはずである。例えば、同じウサギ像のポリゴン・データを使って、CGを作成した例を図4に示す。左がCoin-3Dで、右がDrawstuffによるものである。同じデータなのに、美麗さに差があることが図からもわかる。ポリゴン1つとっても、Coin-3Dは3頂点以外にも平面の法線ベクトルを指定しなければならない。どちらが表でどちらが裏かを指定するためである。その一方で、Drawstuffは3頂点の記述順番で裏/表を判別しているので法線ベクトルを計算する必要は無い。 図4:ウサギ像のCG表示例(左:Coin-3D、右:Drawstuff) CGプログラミングに限った話ではないが、目に見える形で不具合やエラーがわかるというのが、プログラミング上達に欠かせない要素である。人間は目に見えないと気が付かないから、目に見えない不具合やエラーが放置されたプログラムが次々に問題となっている現状がある。だからこそ、今後もこれらのライブラリを自身の研究発展や学生の教育促進に役立てたいと願う。 [...]
2022-12-01E-letter / 記事就職に強い、電気電子通信工学コース 投稿日:令和4年12月1日 教授 信山克義   2023年3月本学工学部電気電子工学科(現:電気電子通信工学コース)卒業予定の学生について、入学時から4年間修学支援担任を務めており、進路についても全面的にサポートしました。  リクルートの就職みらい研究所の「就職プロセス調査」によると、2022年10月1日時点の2023年3月卒業予定大学生の就職内定率(内定はもらっていても、就職活動を続けている学生の割合)は93.8%、進路確定率(進路先を確定した学生の割合)は87.1%とのことです1)。また、青森労働局によると、青森県内の大学生(11校)の就職内定率は、10月末時点で68.0%とのことです2)。一方、本学科の学生の進路確定率は9月1日時点で100%となりました。  学生は、電力会社や電気設備業、プラント・エンジニアリング業、半導体・電子部品製造業、情報通信業、自動車開発業など、幅広い業界から内定を得ました。内定先は、約6割が大手企業であり、約3割が地元の優良企業、公務員に内定した学生もいます。受験企業数は、約6割の学生が1社のみであり、残りの学生も数社です。大学院に進学する学生もおります。 このように電気電子工学科(現:電気電子通信工学コース)は就職に強いのですが、これには大きく3つの理由があると考えております。 ■電気電子通信分野を広範にカバーする独自の学習環境  電気電子通信工学コースではエンジニアリング・デザイン教育を重視しており、一つの課題に対して様々な知識を集約して多様な解を考え出す能力を身につけます。また、チャレンジ精神に富んだ企画カ・設計力を育むため、4年間一貫した実践教育を行い、電気電子通信分野の専門知識を広範にわたり身につけます。本コースは様々な国家資格の認定校となっているため、条件はありますが卒業後に電気主任技術者や特殊無線技⼠などの難関国家資格を得ることができます。 社会では、理系の中でも特に電気電子通信分野の高度な専門知識を身につけた人材の需要が高く、本コースの学生はこれらの専門知識に加えて問題発見力や課題発見力、問題解決能力、リーダーシップ力を備えて卒業生していきます。 ■学生一人ひとりを把握した、徹底した進路サポート体制   現4学年の修学支援担任として、入学時から学生の顔と名前を覚え、授業の出欠状況や交友関係なども把握し、学内の教職員と連携しながら親身にきめ細かくサポートしてきました。学生の顔と名前を覚えることの大切さは、若い頃に坂本禎智学長から教わりました。  学生への就職関連情報配信や個人面談は、オンラインを大いに活用しました。個人面談は、学生一人ひとりが希望する進路を把握するために時間をかけて何度も行い、希望に沿った企業を紹介しました。学科独自の企業説明会や見学会も積極的に開催し、学生の進路選択に役立ててもらいました。エントリーシートの添削や面接練習などのサポートは、就職支援担当スタッフや卒業研究担当教員と連携しながら行いました。このように、本コースには学生に寄り添いながら一人ひとりを把握した徹底した進路サポート体制が整っています。 ■50年の歴史があり、多くの優秀な卒業生が社会で活躍  本コースは、1972年の本学開学時に設置された電気工学科がルーツであり、50年の歴史があります。社会では、4,000人を超える多くの優秀な卒業生が活躍しております。求人で訪れる企業の採用担当者は、卒業生の活躍を熱心に語り、本コースの学生を継続して採用したいと仰っています。 1) リクルートの就職みらい研究所の「就職プロセス調査」 就職プロセス調査(2023年卒)「2022年10月1日時点 内定状況」 https://shushokumirai.recruit.co.jp/research_article/20221007001/ 2)青森労働局「令和5年3月新規大学等卒業予定者就職内定状況(令和4年10月末)」 https://jsite.mhlw.go.jp/aomori-roudoukyoku/redirect/684_data_00434.html [...]
2022-11-01E-letter / 講演会卒業生による講演会を実施しました 投稿日:令和4年11月1日 教授 柴田幸司  2022年7月29日(金)の14:30より、本学の卒業生である水口 拓弥さまを八戸工業大学にお迎えし、工学部工学科電気電子通信工学コースの1年生に対する講演会を開催いたしました。水口 拓弥さまは2005年に本学の工学部電気電子工学科をご卒業されましたが、4年次には、藤田成隆 研究室にて太陽電池の高効率化用薄膜の研究に携わったそうです。その後は株式会社アルトナーに就職し、家電大手企業や大手自動車メーカの研究所でパワーエレクトロニクスや燃料電池、更に医療用電子機器の開発に携わりました。ご講演では、これまでの水口様のお仕事の足跡を振り返って頂きつつ、八工大の電気電子通信工学コース1年生に電気電子に関する技術開発の魅力のご説明を頂きました。水口様は本学をご卒業されて17年ぶりに本学に足を運んだそうですが、メディアセンター以外は当時の記憶とほとんど変わっていないことを感慨深く感じられたそうです。このような大先輩のご講演内容を、電気電子通信工学コースの1年生は真剣に聴講した後、多くの質問をしていました。このような貴重な機会を頂きました水口様に、この場をお借りしてお礼申し上げます。 [...]
2022-10-04E-letter / 記事必要と必然 投稿日:令和4年10月1日 執筆:教授 川本清  「アルスエレクトロニカ」というイベントがある。結構メジャーな催しのようだが、浅学にして最近読んだ書籍で知った。オーストリアのリンツで40年近くわたり毎年開催されていて、同名の公設企業体を設置するまでに発展しているらしい。リンツの人口は約20万人というから、八戸と近い。ことのはじまりはクラシック音楽フェスティバルの関連プログラムとしての電子音楽のイベントだったとか。日本でいうところのコミケのギーク版のようにも思えるも、第1回から「アート,テクノロジー,社会のための祭典」として定義されていたという。本書によると、アートとテクノロジーのそれぞれの民族誌が織り合わされるように「アルスエレクトロニカ」は発展しているように読み取れる。今では地域のみならず行政も加わって、アーティストのみならず企業も集積されているようで、地域振興の成功例ともいえるだろう。 八戸市の取組にもいろいろあるが、最近なら「本のまち八戸ブックフェス2022」がある。先月末、市中心街の複数施設を会場に、「はちのへホコテン」と同時開催された。私のスケジュール帳を見てみると2014年には現在も実施されている「本のまち」関連イベントに私的に参加していた記録がある。八戸ブックセンターが開館5周年を迎えたというから、「本のまち」という事業は、まだ10年にはならないが、規模も拡大し実施環境も充実してきているのだろう。そこで、「本」をキーマテリアルに、地域の拠点化を図ることを妄想してみよう。出版不況といわれる昨今、紙だけではなく電子書籍関連の掘り起こしは必須だろう。電子化なら地域は関係ない(!)かもしれないが、手持ちのワープロ作成の文書をただEPUBやPDFにするのみでは味気ない。やはり可読性や見映えを追求した電子版の高い編集力のある地域、書籍にとどまらず、デジタルアーカイブの構築ノウハウを蓄積した地域、著作権処理がスムースに進む地域、というのは魅力にならないだろうか。デジタルコンテンツは閲覧システム、表示デバイスの利用方法とも密接に関連する。ニーズが身近になればハードウェア関連にも何か展開が(クリスタルバレイ構想再び…)、あるだろうか。「ネットは広大」だ。地域で動く時代ではないかもしれない。しかし、アンプラグドな状態でも関係者が近くにいる、という状態まで集積が進めば、フェイズシフトが起きないだろうか? リンツはもともと鉄鋼業で成り立った都市だという。それが鉄鋼不況を経て「アート,テクノロジー,社会」を結び付ける地域に変容した。上の「本」からの展開はあくまで凡庸なたとえ話に過ぎない。時代は変化する。将来を見わたしたとき、社会と環境の必要と地域の必然を満たすアジェンダとはどのようなものになるだろうか。 鷲尾和彦、「アルスエレクトロニカの挑戦」、学芸出版社(2017).https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761526412/ 八戸ブックセンター「本のまち八戸ブックフェス2022」紹介ページ、https://8book.jp/bookcenter/5232/ 株式会社まちづくり「八戸のはちのへホコテン」ページ、https://www.8town.co.jp/project/hokoten/ 近藤信一、「青森県の『クリスタルバレイ構想』―構想はなぜ挫折したのか―」、機械情報産業カレント分析レポートNo.82(2011年1月). http://www.jspmi.or.jp/system/file/6/25/current_82.pdf マチニワでの「一箱古本市」の準備の様子。この後、画面奥の八戸ポータルミュージアムはっち前の表通りが歩行者天国に設定され、他の各種イベントと同時に開催された。(2018年9月30日) [...]
2022-09-21E-letter / 記事土星の環は、なくなるか? 投稿日:令和4年9月1日 執筆:教授 石山俊彦  この小論を書いている2022年8月下旬は、季節が夏から秋へと移りかわる時期である。夜空を見上げると、土星は深夜に南に見える「やぎ座」にある。これから秋にかけて、土星が観測しやすいシーズンに入る。土星は、天体観望会を開催すると一番の人気者である。土星本体の周囲に環を持つ独特のルックスは、子どもたちの興味を引いてやまないのだろう。 土星の環を最初に見たのはガリレオだが、望遠鏡の精度の問題で、彼は土星の周りにあるものが環であることに気づかなかった(土星の環を発見したのはホイヘンス)。長い間、土星にのみ環があるということは謎だった。他の惑星には環がないのかというと、実は細い環があるものの、地球上からは直接観察することはできない。他の惑星の環は、1977年に天王星が背後の恒星を隠す現象(掩蔽)の観測から発見された。木星と海王星の環は、深宇宙探査機(ボイジャー1号、2号)による観測によって発見された。こうした観測の結果、惑星の環は、巨大惑星には珍しいものではないということがわかってきた。 どうして、土星だけが(地上から観測できるほどの)立派な環を持っているのだろう。木星などの他の惑星も、何年か経てば土星のような立派な環を持つことができるのだろうか。この疑問にカリフォルニア大学の研究者が答えてくれた。彼らの論文によれば、木星は巨大な衛星(ガリレオ衛星)を持つことで、環が作られても安定に成長できないことがシミュレーションにより計算された。 それでは、土星の環は、これからも安定に存在し続けられるのだろうか。探査機「カッシーニ」で土星の環を観測した結果によれば、環を構成する物質(数ミクロン~数十メートルの大きさの氷と考えられている)が土星の本体に降り注いでいることがわかった。土星の環を構成する粒子は、必ずしも、安定な状態で土星の周りを回っている訳ではない。環の将来は、それを構成する粒子の供給量と土星本体に降り注ぐ量(放出量)のバランスで決まるようだ。 NASAの研究者によれば、土星の環は1億年位前に形成され、早ければ1億年後にはなくなると予想されている。宇宙は138億年前に誕生したと考えられているので、土星が環を持っている期間は、それほど長いものではないようだ。もし、数千万年後にも人類が生存していれば、その頃の人類は細くなった土星の輪を観察することになるだろう。現在の土星は、口径5~6cm程度の小型望遠鏡でも、その環を楽しむことができる。我々は、土星の環を楽しむことができる、ちょうど良い時代に巡り合ったようだ。こうした事もサイエンスの不思議さやめぐり合わせなのかもしれない。 ※土星の環の誕生、消滅には諸説あります。本稿では、NASAの研究者による説を取り上げました。 Credit: NASA/JPL-Caltech/SSI, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で) [...]
2022-08-01E-letter / 記事八戸工業大学は創立50周年を迎えました。 執筆:教授 関秀廣  八戸圏域の中心都市である八戸市は、海から拓け、海とともに発展した街であり、日本有数の水揚高を誇る漁業、その豊富な水産資源を活用した水産加工を始めとする食料品製造業が多く集積しています。東北地方初の八戸火力発電所の操業開始や1964(昭和39)年に新産業都市に指定されたのを機に、八戸港、道路、鉄道などの産業インフラが整備され、製紙工場、金属素材工場、飼料穀物コンビ ナート等の立地が臨海部を中心に進展してきました。 70年ほど前ですが漁業関係者にとって無線技士免許を取得することが急務でした。この人材養成を目的に1956(昭和31)年に学校法人八戸高等電波学校が組織され、現在の八戸工業大学第一高等学校が位置する白銀地区に八戸高等電波学校が開学しました。ここに八戸工業大学のルーツがあります。その後、八戸地区が新産業都市指定され、「むつ小川原地域」がナショナル・プロジェクトとして位置づけられたことから、四年制大学の工学部が無い青森県を主な背景として、八戸工業大学の設立計画機運が高まりました。1972(昭和47)年、本学は将来の東北の経済を担い、地元八戸市を中心とする自治体や産業界、教育界の強い要請のもと、青森県初の工学系4年制大学として発足しました。 Photo.01 は1970年代の創立当時の八戸工業大学です。周囲は広大な丘陵でした。赤枠はこの時建てられていた5棟を表しています。機械工学科・産業機械工学科・電気工学科の3学科でスタートしました。その創立から50年経過したキャンパスがPhoto.02です。2学部の18棟に拡大しています。周囲は陸上グランドに加えて、野球場3面、サッカー場2面、テニスコートなどが整備されています。右隣には一部大学の敷地を提供した八戸久慈自動車道の八戸南インターチェンジが設置されています。50年間様々な紆余曲折を経て現在に至っています、 Photo.01 1970年代の創立当時の八戸工業大学(5棟) Photo.02 創立50周年を迎えた八戸工業大学(18棟) [...]
2022-07-01E-letter / 記事高大連携の取組 執筆:教授 石山武 高校と大学が協力して教育活動を行う高大連携は、本コースでも重要視している取組です。高校生に大学での教育や研究に触れてもらう場として、主に電気電子通信工学分野に関する授業体験や実習などを行っています。その一つとして、大学での研究を学部4年生や大学院生の指導を受けながら体験してもらう機会を設けています。今現在、高校で学んでいる内容が、やがて将来の自分の専門分野に役立つことを実感してもらえればと思います。またその一方で、指導する側に立つ大学生にとっては、自分の研究内容についての理解を深めるとともに、それを他者に教えることの難しさを実感する良い機会になっていると思います。昨年度の、新型コロナウィルス感染症の影響下でのオンライン形式での実施を経て、今年度はオンラインと来学してもらっての実習を組み合わせた新たな形式で、試行錯誤を重ねながら進めています。 [...]
2022-03-01E-letter / 記事電流戦争 執筆:講師 花田一磨  戦争(?)の気配を感じる今日この頃ですが、タイトルの「電流戦争」は19世紀終盤の電気事業黎明期において電力システムの電気方式として直流と交流のどちらを採用するかを争った出来事のことです。これを題材にした映画が「エジソンズ・ゲーム」(原題:The Current War)で、しばらく前からアマゾンのプライムビデオで見られるようになっています。  いわゆる人間ドラマ中心の映画で、どうして交流方式が勝利したのかについては細かい説明はなかったような気もしますが――(ウエスチングハウスがニューヨークの地図上にボールを置き、直流方式だと送電距離が短く発電所がたくさん必要になることを示している。日本でいえば図1の東京電燈の資料が参考になる。直流発電機がある第1~5の各電燈局から半径数キロメートルしか配電できていなかった)――、冒頭5分くらいのところのウエスチングハウスの「エジソンが“夜を葬る”と」というセリフを聞き、東京・銀座にあるアーク灯の記念碑の「不夜城を現出した」という文言(写真1)や東日本大震災直後の夜を思い浮かべました。  今日の話の流れとしては、①前述のアーク灯のイベントの前日譚が由来となっている3月25日の電気記念日、②3月11日東日本大震災、③直流方式が採用されている北本連系線(本学のある青森県と北海道を結んでいる)など色々展開できますが、発散してしまいそうですので「3月は電気について考える月」ということでひとまず筆を下してみます。 図1 明治二十四年下期末の電燈普及状態(東京電燈株式会社開業五十年史の資料に一部加筆) 写真1 東京・銀座にあるアーク灯の記念碑。「明治15年11月こゝに始めてアーク灯をつけ不夜城を現出した 当時の錦絵を彫刻してその記念とする 昭和31年10月1日 銀座通聯合会 照明学会 関東電気協会 東京電力株式会社」とある。 [...]
2022-02-15E-letter / 研究関連 / 記事ノイズ除去技術の習得のために 執筆:准教授 越田俊介  当方の研究室あるいはディジタル信号処理の授業に興味をもってくださる学生のほとんどは、ノイズ除去技術の習得に対して強い意欲を持っているように感じます。たとえば、「自分で録音した音声信号にノイズが混じっているので、ノイズを取り除く方法を身に着けたい」という相談を、学生からときどき受けます。  ディジタル信号処理におけるノイズ除去の方法は非常にたくさんありますが、最も基本的な方法はディジタルフィルタです。それゆえに、ディジタルフィルタを自分自身で設計および実現できるようになれば、基礎的なノイズ除去技術を習得できたと言って良いと思います。  そこで、「ディジタルフィルタを理解できるようになるためには、どのような勉強が必要になるのか」を把握することが、非常に重要なポイントになるのではないかと思います(というよりは、当方が本学に赴任して以降、このことをまず自分でしっかり考えた上で授業をやらなければならないと考えるようになりました)。もちろん大学では、学生自身が自発的に学習することが重要ですので、当方の個人的な考えとしては、やはりディジタル信号処理に関する良書を学生が自分で読み進めていって欲しいと思っており、それができれば、自ずとノイズ除去技術も修得できると考えています。しかしながら、自分で本を読んで勉強を進めていけるようになるためには、人にもよりますが一般的に高いハードルを乗り越えなければなりませんので、そのハードルを少しでも下げることが教員の役目の一つではないかと思っています。  本題に戻りますが、今の自分としては、ディジタルフィルタおよびディジタル信号処理を理解するための最初の一歩は「正弦波を確実に理解すること」であると考えています。信号処理だけでなく電気の分野においても、交流を扱う上で正弦波の理解は必須となります。そして正弦波を理解するためには、正弦波の挙動を数式で書き表すことができるようになることが重要です。たとえば「50Hz・100Vの交流電圧」を数式ですぐ書けるようになることが、電気および信号処理では重要かつ必須のタスクになると思います。  全ての学生が正弦波を理解・体得できるようになるためにどのような教え方をすれば良いかが、現在の自分の課題となっています。 [...]