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HELLO! 未来 ... ものづくり、あなたの夢かなえます。

「電気電子通信工学の分野」 とは....電気 [Electrical] ・電子 [Electronic] ・通信 [Communications] に関わる技術は、電気産業、エネルギー産業、電子デバイス産業、情報通信産業、計測器産業など、あらゆる産業分野で応用されています。

日本の産業において電気はほとんどの産業に携わり、必要不可欠な分野になっています。農業機械、船舶機器、食品からデバイスの工場設備、建設機械、コンピュータや情報通信機器の全てにおいて電気分野の技術が応用されています。よって電気技術者は全ての産業において必要です。


電 気 [Electrical]
電気機器、エネルギー機器、食品機器、衛生機器、環境浄化機器、福祉機器、AV機器など


電 子 [Electronic]
ロボット、光エレクトロニクス、電子回路、電子デバイス、制御機器、計測器、医療電子機器など


通 信 [Communications]
通信システム、ネットワーク、地球環境探査、衛星通信、プログラミング、ソフトウェアなど

 

電気電子通信工学コースでは、電気・電子・情報通信技術を融合し、環境・エネルギー問題に対応できる技術者を育成します。電気エネルギーシステム系、電子デバイスシステム制御系、通信・情報・メディア系の3つの柱をバランスよく履修できる教育を行っています。

最新更新情報 - What’s New? -

 

最新情報
2023-02-28E-letter / 研究関連 / 記事教材としてのアプリ作成 掲載日:令和5年2月28日 執筆:准教授 越田俊介  今年度、高校生など外部の方々を対象として、筆者の専門分野であるディジタル信号処理に関する授業を何度か実施しました。ディジタル信号処理は計算機の数値演算を基にした技術であるため、コンピュータが不可欠です。そこで、授業を実施するにあたり、受講生がコンピュータを直に操作して信号処理を気軽に体験できるような教材として、信号の生成や雑音除去を実現するアプリを作成してみました。たとえば下図に示したアプリでは、2つの波を重ね合わせた信号を生成し、その時間波形とパワースペクトルをグラフ表示するとともに、音も出力します。なお筆者は研究にてMATLABを利用していますが、現在のバージョンのMATLABではアプリの開発環境が整っており、所望のアプリを容易に作成できます。 コンピュータを利用した信号処理体験の授業の試みは以前から行われていましたが、筆者の知る限りでは、一昔前はアプリ利用ではなく信号処理のプログラム作成を主体としていたように思います。プログラム作成の実習は、プログラミングが得意な受講生に対しては有効ですが、プログラミングが未経験であったり苦手意識を持っていたりする受講生にとっては、信号処理体験の楽しみが半減してしまいます。また、信号処理を勉強する上では基礎理論の習得が非常に重要ですが、基礎理論の理解とプログラミングの両方を扱った実習の場合、基礎理論の理解が疎かになりやすいとも感じています。このような背景から、アプリの利用を主体とした実習は、基礎理論の理解へのハードルを下げる有効な方法の一つになり得ると思います。 [...]
2023-02-01E-letter / 記事新旧技術・価値観の橋渡し  執筆:准教授 佐々木崇徳 投稿日:令和5年2月1日  世の中には次々と新しい技術が登場し、生活が便利になっていく。最新技術によるものもあれば、斬新なアイディアによるものまで、枚挙にいとまが無いほどである。  「便利なツールがあるのなら、それを使えばいいじゃない」 といわれるが、確かに至極合理的ではある。 例えば電子卓上計算機(電卓)、確かに数字を打てば計算結果がはじき出される。その計算結果は正確で、しかも素早い。昔は筆算、暗算が基本で、ちょっと進んでいる人は算盤を使って計算していた。それに比べてなんと効率的であろうか。  しかし、ちょっと待ってほしい。電卓は確かに正確で、その途中計算の仕方を知らなくとも計算結果を得ることはできる。だが、その答えは正しいのか?確かに電卓は計算ミスをすることは無い。しかし、その途中の数字や計算記号など、関数電卓であれば括弧の範囲や関数などが間違っていた場合、さらには入力した数値自体が間違っていた場合、その結果は意図したものとなっているだろうか。昨今大学の定期試験などでも電卓の使用を認める場合も多くなっているが、正答率が上がっていたり、解答時間が短縮されていたりといったことは、実感としてはあまり感じられない。  電卓を使うことで計算過程を考えずに、あるいはおおよそどの程度の答えになるかを予想せずに電卓を打ち、その結果を転記する作業を行っているに過ぎないのでは無いかと疑いたくなる。  そもそも便利なツールというのは、不便な時代を知っている人から見た価値観である。はじめからそのツールが身近にある人に取ってみれば、特段便利というわけでも無く、当たり前のツールである。しかし、不便な時代においては、ツールに頼らずに自身で解決する手段を必死で身につけ、それを使いこなしていた。そこに新いツールで作業が効率化されて、正確かつ高速な作業を可能にしている。  そうはいっても、今筆者のような世代が感じていることは、おそらくもっと前の世代も感じていたことであろう。世代間の考え方や能力の差について、「最近の若者は」という嘆きの言葉は紀元前3000年頃にエジプトですでに言われていたようである。しかしそう言われても5000年間着実に文明は進んでいるわけだから、翻ってみればこういった発言をしている人はその過渡期に於いて、次の世代を心配している一方で、新しいスタンダードに取り残される不安を抱えているのでは無いか、ともとれる。  筆者らは大学で教鞭を執る立場にありながら、常に新しいことを模索するという特殊な仕事をしている。そのような中で、やはりこの新旧の壁に頻繁にぶつかっており、日々学生との向き合い方を模索している。技術と価値観が変遷していくなか、我々は古い価値観を押しつけるのでは無く、古い知識や技術の利点を伝えて、新しい世代がそれを選択して継承してくもらえるような工夫を求められているのかもしれない、と思う今日この頃である。 [...]
2023-01-04E-letter / 記事ComputerGraphics作成ライブラリ 執筆:准教授 神原利彦 投稿日:令和5年1月4日 近年のComputerGraphics(以下CGと略)業界における表現技術の進歩は著しく、Unreal Engine(図1左)やUnity(図1右)といった最新のゲームエンジンを使えば、美麗な3次元CGが簡単に描けるような時代となっている。そんな時代にあっても、筆者は細々とマイナーなCGライブラリを使って研究している。ライブラリとはプログラミングの補助ツールのようなものであり、学生のプログラミング教育の教材として使用されている。単に美麗さを追求する気がないだけと言ってしまえばそれまでだが、無料で使える上に使い勝手が気に入ったせいもあり、筆者は長年使い続けている。今回は、そのマイナーなCGライブラリを2つ紹介する。 図1:Unreal EngineとUnityのロゴマーク 1つ目は、Coin-3Dと呼ばれるライブラリである。そもそも、筆者は最初からこのCoin-3Dを使っていたわけではない。最初に使っていたCGライブラリは、米SGI製のワークステーションコンピュータO2(図2)の上で動作するOpenInventorというものであった。これはSGIが倒産した現在でも生き残っており、TGSという会社が保守・販売をしているのだが、商用ライブラリで高価なため、大学教員ごときが買えるものではない。TGSはSGIの過去の遺産を生かし技術を引き継いで正式なライセンスとしているから高価なのも当然と言えよう。SGIの全盛期には、映画「ジュラシックパーク」のCGがすべてSGIのワークステーションコンピュータで創られたというほどSGIのCG技術はハードウェアとソフトウェアの両面で優れていた。だが、栄枯盛衰が激しい業界なので、やがてハードウェアはnVIDIAやATIに追い抜かれ、ソフトウェアもOpenInventorをオープンソース化しようとして失敗するとかの凋落が続き、最後は倒産してしまった。 図2:SGI製ワークステーションコンピュータO2(オーツー) では、Coin-3Dとは一体何か?実は、OpenInventorのクローン・ライブラリなのだ。TGSとは別の作り手がゼロから書き起こしたコードで創られており、内部の計算構造などはOpenInventorとは全く異なる作り方をしているくせに、関数名はOpenInventorと全く同一の名前でほぼ同一の機能として使えるライブラリなのだ。つまり、やってることはTGSのOpenInventorと同じなのに無料で使える上にライセンス的にも合法ということになる。元々がIRIXというUNIXプラットフォームで動いていたせいもあり、現在でもWindows/Mac/Linuxのどのプラットフォームでも使えるというのが嬉しい。尤もCoin-3D単体では使えず、LinuxやMacであればSoQtが、WindowsであればSoWinが補助的に必要になってくるが、そのあたりの詳細は長くなるので割愛する。何にせよ、OpenInventorを使っていた時代のC++プログラムがCoin-3Dを使えば、全く問題なく動作しCGが表示されるのだ。このCoin-3Dは研究だけでなく、プログラミング教育にも役立てている。マイナーな存在と書いたが、実はFreeCADと呼ばれるCADソフトのプラグインとしてCoin-3Dが使われているらしい。興味のある人は、Inventor Mentorという書籍(図3)を参考にプログラムを書いてみるといい。全ページ英語だが、日本人でもすぐわかるぐらい簡単な表現しか使ってない上に図が多くてわかりやすいので、すぐCGが創れる。 図3:OpenInventorの教科書 「Inventor Mentor」 筆者が紹介するもう1つは、Drawstuffと呼ばれるCGライブラリである。OpenDynamicsEngineと呼ばれる物理エンジンに付属している簡易なCGライブラリで、とにかく軽い。Unreal EngineやUnityがやたら重くて、いくら美麗なCGであってもカクカクした動きでは話にならんという一方で、Drawstuffは、美麗さは無いがサクサク動いてくれるという点が優れている。OpenDynamicsEngineを使う場合だけでなく、別のシミュレーションの3次元的な可視化の研究にも使っている。尤も、あまりにも原色的なので、CGというよりは子供のお絵描き…と言われることもあるぐらいだ。確かに美麗さはないと言って良いだろう。 さて、Coin-3DとDrawstuffのうち、どちらのCGライブラリも細かい仕様がかなり異なる。そのため、どちらかの仕様のつもりでプログラムを書いていたら、実はもう片方の仕様だったなんてことも起きる。Windows動かしてるのに、Macのキー操作してしまった…と同じような感覚である。例えば、表示座標系の仕様が異なっている。Coin-3Dは、水平x軸、垂直y軸、奥行z軸なのに対し、Drawstuffは、水平y軸、垂直z軸、奥行x軸なのだ。そのあたりの2つの仕様の違いを理解し、同じような動きをするように考えてプログラムを書くというのも実に面白い。仕様が違うなら、頭を使って、違うのに合わせてプログラムを書き変えればいいだけのことだ。特にCG描画のプログラムってのは、表示させてみれば、どこがおかしいかは一目瞭然なので、表示された結果をじっくりと観察すればエラーや不具合などがわかるはずである。例えば、同じウサギ像のポリゴン・データを使って、CGを作成した例を図4に示す。左がCoin-3Dで、右がDrawstuffによるものである。同じデータなのに、美麗さに差があることが図からもわかる。ポリゴン1つとっても、Coin-3Dは3頂点以外にも平面の法線ベクトルを指定しなければならない。どちらが表でどちらが裏かを指定するためである。その一方で、Drawstuffは3頂点の記述順番で裏/表を判別しているので法線ベクトルを計算する必要は無い。 図4:ウサギ像のCG表示例(左:Coin-3D、右:Drawstuff) CGプログラミングに限った話ではないが、目に見える形で不具合やエラーがわかるというのが、プログラミング上達に欠かせない要素である。人間は目に見えないと気が付かないから、目に見えない不具合やエラーが放置されたプログラムが次々に問題となっている現状がある。だからこそ、今後もこれらのライブラリを自身の研究発展や学生の教育促進に役立てたいと願う。 [...]
2022-12-01E-letter / 記事就職に強い、電気電子通信工学コース 投稿日:令和4年12月1日 教授 信山克義   2023年3月本学工学部電気電子工学科(現:電気電子通信工学コース)卒業予定の学生について、入学時から4年間修学支援担任を務めており、進路についても全面的にサポートしました。  リクルートの就職みらい研究所の「就職プロセス調査」によると、2022年10月1日時点の2023年3月卒業予定大学生の就職内定率(内定はもらっていても、就職活動を続けている学生の割合)は93.8%、進路確定率(進路先を確定した学生の割合)は87.1%とのことです1)。また、青森労働局によると、青森県内の大学生(11校)の就職内定率は、10月末時点で68.0%とのことです2)。一方、本学科の学生の進路確定率は9月1日時点で100%となりました。  学生は、電力会社や電気設備業、プラント・エンジニアリング業、半導体・電子部品製造業、情報通信業、自動車開発業など、幅広い業界から内定を得ました。内定先は、約6割が大手企業であり、約3割が地元の優良企業、公務員に内定した学生もいます。受験企業数は、約6割の学生が1社のみであり、残りの学生も数社です。大学院に進学する学生もおります。 このように電気電子工学科(現:電気電子通信工学コース)は就職に強いのですが、これには大きく3つの理由があると考えております。 ■電気電子通信分野を広範にカバーする独自の学習環境  電気電子通信工学コースではエンジニアリング・デザイン教育を重視しており、一つの課題に対して様々な知識を集約して多様な解を考え出す能力を身につけます。また、チャレンジ精神に富んだ企画カ・設計力を育むため、4年間一貫した実践教育を行い、電気電子通信分野の専門知識を広範にわたり身につけます。本コースは様々な国家資格の認定校となっているため、条件はありますが卒業後に電気主任技術者や特殊無線技⼠などの難関国家資格を得ることができます。 社会では、理系の中でも特に電気電子通信分野の高度な専門知識を身につけた人材の需要が高く、本コースの学生はこれらの専門知識に加えて問題発見力や課題発見力、問題解決能力、リーダーシップ力を備えて卒業生していきます。 ■学生一人ひとりを把握した、徹底した進路サポート体制   現4学年の修学支援担任として、入学時から学生の顔と名前を覚え、授業の出欠状況や交友関係なども把握し、学内の教職員と連携しながら親身にきめ細かくサポートしてきました。学生の顔と名前を覚えることの大切さは、若い頃に坂本禎智学長から教わりました。  学生への就職関連情報配信や個人面談は、オンラインを大いに活用しました。個人面談は、学生一人ひとりが希望する進路を把握するために時間をかけて何度も行い、希望に沿った企業を紹介しました。学科独自の企業説明会や見学会も積極的に開催し、学生の進路選択に役立ててもらいました。エントリーシートの添削や面接練習などのサポートは、就職支援担当スタッフや卒業研究担当教員と連携しながら行いました。このように、本コースには学生に寄り添いながら一人ひとりを把握した徹底した進路サポート体制が整っています。 ■50年の歴史があり、多くの優秀な卒業生が社会で活躍  本コースは、1972年の本学開学時に設置された電気工学科がルーツであり、50年の歴史があります。社会では、4,000人を超える多くの優秀な卒業生が活躍しております。求人で訪れる企業の採用担当者は、卒業生の活躍を熱心に語り、本コースの学生を継続して採用したいと仰っています。 1) リクルートの就職みらい研究所の「就職プロセス調査」 就職プロセス調査(2023年卒)「2022年10月1日時点 内定状況」 https://shushokumirai.recruit.co.jp/research_article/20221007001/ 2)青森労働局「令和5年3月新規大学等卒業予定者就職内定状況(令和4年10月末)」 https://jsite.mhlw.go.jp/aomori-roudoukyoku/redirect/684_data_00434.html [...]
2022-11-01E-letter / 講演会卒業生による講演会を実施しました 投稿日:令和4年11月1日 教授 柴田幸司  2022年7月29日(金)の14:30より、本学の卒業生である水口 拓弥さまを八戸工業大学にお迎えし、工学部工学科電気電子通信工学コースの1年生に対する講演会を開催いたしました。水口 拓弥さまは2005年に本学の工学部電気電子工学科をご卒業されましたが、4年次には、藤田成隆 研究室にて太陽電池の高効率化用薄膜の研究に携わったそうです。その後は株式会社アルトナーに就職し、家電大手企業や大手自動車メーカの研究所でパワーエレクトロニクスや燃料電池、更に医療用電子機器の開発に携わりました。ご講演では、これまでの水口様のお仕事の足跡を振り返って頂きつつ、八工大の電気電子通信工学コース1年生に電気電子に関する技術開発の魅力のご説明を頂きました。水口様は本学をご卒業されて17年ぶりに本学に足を運んだそうですが、メディアセンター以外は当時の記憶とほとんど変わっていないことを感慨深く感じられたそうです。このような大先輩のご講演内容を、電気電子通信工学コースの1年生は真剣に聴講した後、多くの質問をしていました。このような貴重な機会を頂きました水口様に、この場をお借りしてお礼申し上げます。 [...]
2022-10-04E-letter / 記事必要と必然 投稿日:令和4年10月1日 執筆:教授 川本清  「アルスエレクトロニカ」というイベントがある。結構メジャーな催しのようだが、浅学にして最近読んだ書籍で知った。オーストリアのリンツで40年近くわたり毎年開催されていて、同名の公設企業体を設置するまでに発展しているらしい。リンツの人口は約20万人というから、八戸と近い。ことのはじまりはクラシック音楽フェスティバルの関連プログラムとしての電子音楽のイベントだったとか。日本でいうところのコミケのギーク版のようにも思えるも、第1回から「アート,テクノロジー,社会のための祭典」として定義されていたという。本書によると、アートとテクノロジーのそれぞれの民族誌が織り合わされるように「アルスエレクトロニカ」は発展しているように読み取れる。今では地域のみならず行政も加わって、アーティストのみならず企業も集積されているようで、地域振興の成功例ともいえるだろう。 八戸市の取組にもいろいろあるが、最近なら「本のまち八戸ブックフェス2022」がある。先月末、市中心街の複数施設を会場に、「はちのへホコテン」と同時開催された。私のスケジュール帳を見てみると2014年には現在も実施されている「本のまち」関連イベントに私的に参加していた記録がある。八戸ブックセンターが開館5周年を迎えたというから、「本のまち」という事業は、まだ10年にはならないが、規模も拡大し実施環境も充実してきているのだろう。そこで、「本」をキーマテリアルに、地域の拠点化を図ることを妄想してみよう。出版不況といわれる昨今、紙だけではなく電子書籍関連の掘り起こしは必須だろう。電子化なら地域は関係ない(!)かもしれないが、手持ちのワープロ作成の文書をただEPUBやPDFにするのみでは味気ない。やはり可読性や見映えを追求した電子版の高い編集力のある地域、書籍にとどまらず、デジタルアーカイブの構築ノウハウを蓄積した地域、著作権処理がスムースに進む地域、というのは魅力にならないだろうか。デジタルコンテンツは閲覧システム、表示デバイスの利用方法とも密接に関連する。ニーズが身近になればハードウェア関連にも何か展開が(クリスタルバレイ構想再び…)、あるだろうか。「ネットは広大」だ。地域で動く時代ではないかもしれない。しかし、アンプラグドな状態でも関係者が近くにいる、という状態まで集積が進めば、フェイズシフトが起きないだろうか? リンツはもともと鉄鋼業で成り立った都市だという。それが鉄鋼不況を経て「アート,テクノロジー,社会」を結び付ける地域に変容した。上の「本」からの展開はあくまで凡庸なたとえ話に過ぎない。時代は変化する。将来を見わたしたとき、社会と環境の必要と地域の必然を満たすアジェンダとはどのようなものになるだろうか。 鷲尾和彦、「アルスエレクトロニカの挑戦」、学芸出版社(2017).https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761526412/ 八戸ブックセンター「本のまち八戸ブックフェス2022」紹介ページ、https://8book.jp/bookcenter/5232/ 株式会社まちづくり「八戸のはちのへホコテン」ページ、https://www.8town.co.jp/project/hokoten/ 近藤信一、「青森県の『クリスタルバレイ構想』―構想はなぜ挫折したのか―」、機械情報産業カレント分析レポートNo.82(2011年1月). http://www.jspmi.or.jp/system/file/6/25/current_82.pdf マチニワでの「一箱古本市」の準備の様子。この後、画面奥の八戸ポータルミュージアムはっち前の表通りが歩行者天国に設定され、他の各種イベントと同時に開催された。(2018年9月30日) [...]
2022-09-21E-letter / 記事土星の環は、なくなるか? 投稿日:令和4年9月1日 執筆:教授 石山俊彦  この小論を書いている2022年8月下旬は、季節が夏から秋へと移りかわる時期である。夜空を見上げると、土星は深夜に南に見える「やぎ座」にある。これから秋にかけて、土星が観測しやすいシーズンに入る。土星は、天体観望会を開催すると一番の人気者である。土星本体の周囲に環を持つ独特のルックスは、子どもたちの興味を引いてやまないのだろう。 土星の環を最初に見たのはガリレオだが、望遠鏡の精度の問題で、彼は土星の周りにあるものが環であることに気づかなかった(土星の環を発見したのはホイヘンス)。長い間、土星にのみ環があるということは謎だった。他の惑星には環がないのかというと、実は細い環があるものの、地球上からは直接観察することはできない。他の惑星の環は、1977年に天王星が背後の恒星を隠す現象(掩蔽)の観測から発見された。木星と海王星の環は、深宇宙探査機(ボイジャー1号、2号)による観測によって発見された。こうした観測の結果、惑星の環は、巨大惑星には珍しいものではないということがわかってきた。 どうして、土星だけが(地上から観測できるほどの)立派な環を持っているのだろう。木星などの他の惑星も、何年か経てば土星のような立派な環を持つことができるのだろうか。この疑問にカリフォルニア大学の研究者が答えてくれた。彼らの論文によれば、木星は巨大な衛星(ガリレオ衛星)を持つことで、環が作られても安定に成長できないことがシミュレーションにより計算された。 それでは、土星の環は、これからも安定に存在し続けられるのだろうか。探査機「カッシーニ」で土星の環を観測した結果によれば、環を構成する物質(数ミクロン~数十メートルの大きさの氷と考えられている)が土星の本体に降り注いでいることがわかった。土星の環を構成する粒子は、必ずしも、安定な状態で土星の周りを回っている訳ではない。環の将来は、それを構成する粒子の供給量と土星本体に降り注ぐ量(放出量)のバランスで決まるようだ。 NASAの研究者によれば、土星の環は1億年位前に形成され、早ければ1億年後にはなくなると予想されている。宇宙は138億年前に誕生したと考えられているので、土星が環を持っている期間は、それほど長いものではないようだ。もし、数千万年後にも人類が生存していれば、その頃の人類は細くなった土星の輪を観察することになるだろう。現在の土星は、口径5~6cm程度の小型望遠鏡でも、その環を楽しむことができる。我々は、土星の環を楽しむことができる、ちょうど良い時代に巡り合ったようだ。こうした事もサイエンスの不思議さやめぐり合わせなのかもしれない。 ※土星の環の誕生、消滅には諸説あります。本稿では、NASAの研究者による説を取り上げました。 Credit: NASA/JPL-Caltech/SSI, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で) [...]
2022-08-01E-letter / 記事八戸工業大学は創立50周年を迎えました。 執筆:教授 関秀廣  八戸圏域の中心都市である八戸市は、海から拓け、海とともに発展した街であり、日本有数の水揚高を誇る漁業、その豊富な水産資源を活用した水産加工を始めとする食料品製造業が多く集積しています。東北地方初の八戸火力発電所の操業開始や1964(昭和39)年に新産業都市に指定されたのを機に、八戸港、道路、鉄道などの産業インフラが整備され、製紙工場、金属素材工場、飼料穀物コンビ ナート等の立地が臨海部を中心に進展してきました。 70年ほど前ですが漁業関係者にとって無線技士免許を取得することが急務でした。この人材養成を目的に1956(昭和31)年に学校法人八戸高等電波学校が組織され、現在の八戸工業大学第一高等学校が位置する白銀地区に八戸高等電波学校が開学しました。ここに八戸工業大学のルーツがあります。その後、八戸地区が新産業都市指定され、「むつ小川原地域」がナショナル・プロジェクトとして位置づけられたことから、四年制大学の工学部が無い青森県を主な背景として、八戸工業大学の設立計画機運が高まりました。1972(昭和47)年、本学は将来の東北の経済を担い、地元八戸市を中心とする自治体や産業界、教育界の強い要請のもと、青森県初の工学系4年制大学として発足しました。 Photo.01 は1970年代の創立当時の八戸工業大学です。周囲は広大な丘陵でした。赤枠はこの時建てられていた5棟を表しています。機械工学科・産業機械工学科・電気工学科の3学科でスタートしました。その創立から50年経過したキャンパスがPhoto.02です。2学部の18棟に拡大しています。周囲は陸上グランドに加えて、野球場3面、サッカー場2面、テニスコートなどが整備されています。右隣には一部大学の敷地を提供した八戸久慈自動車道の八戸南インターチェンジが設置されています。50年間様々な紆余曲折を経て現在に至っています、 Photo.01 1970年代の創立当時の八戸工業大学(5棟) Photo.02 創立50周年を迎えた八戸工業大学(18棟) [...]
2022-03-01E-letter / 記事電流戦争 執筆:講師 花田一磨  戦争(?)の気配を感じる今日この頃ですが、タイトルの「電流戦争」は19世紀終盤の電気事業黎明期において電力システムの電気方式として直流と交流のどちらを採用するかを争った出来事のことです。これを題材にした映画が「エジソンズ・ゲーム」(原題:The Current War)で、しばらく前からアマゾンのプライムビデオで見られるようになっています。  いわゆる人間ドラマ中心の映画で、どうして交流方式が勝利したのかについては細かい説明はなかったような気もしますが――(ウエスチングハウスがニューヨークの地図上にボールを置き、直流方式だと送電距離が短く発電所がたくさん必要になることを示している。日本でいえば図1の東京電燈の資料が参考になる。直流発電機がある第1~5の各電燈局から半径数キロメートルしか配電できていなかった)――、冒頭5分くらいのところのウエスチングハウスの「エジソンが“夜を葬る”と」というセリフを聞き、東京・銀座にあるアーク灯の記念碑の「不夜城を現出した」という文言(写真1)や東日本大震災直後の夜を思い浮かべました。  今日の話の流れとしては、①前述のアーク灯のイベントの前日譚が由来となっている3月25日の電気記念日、②3月11日東日本大震災、③直流方式が採用されている北本連系線(本学のある青森県と北海道を結んでいる)など色々展開できますが、発散してしまいそうですので「3月は電気について考える月」ということでひとまず筆を下してみます。 図1 明治二十四年下期末の電燈普及状態(東京電燈株式会社開業五十年史の資料に一部加筆) 写真1 東京・銀座にあるアーク灯の記念碑。「明治15年11月こゝに始めてアーク灯をつけ不夜城を現出した 当時の錦絵を彫刻してその記念とする 昭和31年10月1日 銀座通聯合会 照明学会 関東電気協会 東京電力株式会社」とある。 [...]
2022-02-15E-letter / 研究関連 / 記事ノイズ除去技術の習得のために 執筆:准教授 越田俊介  当方の研究室あるいはディジタル信号処理の授業に興味をもってくださる学生のほとんどは、ノイズ除去技術の習得に対して強い意欲を持っているように感じます。たとえば、「自分で録音した音声信号にノイズが混じっているので、ノイズを取り除く方法を身に着けたい」という相談を、学生からときどき受けます。  ディジタル信号処理におけるノイズ除去の方法は非常にたくさんありますが、最も基本的な方法はディジタルフィルタです。それゆえに、ディジタルフィルタを自分自身で設計および実現できるようになれば、基礎的なノイズ除去技術を習得できたと言って良いと思います。  そこで、「ディジタルフィルタを理解できるようになるためには、どのような勉強が必要になるのか」を把握することが、非常に重要なポイントになるのではないかと思います(というよりは、当方が本学に赴任して以降、このことをまず自分でしっかり考えた上で授業をやらなければならないと考えるようになりました)。もちろん大学では、学生自身が自発的に学習することが重要ですので、当方の個人的な考えとしては、やはりディジタル信号処理に関する良書を学生が自分で読み進めていって欲しいと思っており、それができれば、自ずとノイズ除去技術も修得できると考えています。しかしながら、自分で本を読んで勉強を進めていけるようになるためには、人にもよりますが一般的に高いハードルを乗り越えなければなりませんので、そのハードルを少しでも下げることが教員の役目の一つではないかと思っています。  本題に戻りますが、今の自分としては、ディジタルフィルタおよびディジタル信号処理を理解するための最初の一歩は「正弦波を確実に理解すること」であると考えています。信号処理だけでなく電気の分野においても、交流を扱う上で正弦波の理解は必須となります。そして正弦波を理解するためには、正弦波の挙動を数式で書き表すことができるようになることが重要です。たとえば「50Hz・100Vの交流電圧」を数式ですぐ書けるようになることが、電気および信号処理では重要かつ必須のタスクになると思います。  全ての学生が正弦波を理解・体得できるようになるためにどのような教え方をすれば良いかが、現在の自分の課題となっています。 [...]
2022-02-02E-letter / 研究関連 / 記事高校生と大学生が宇宙考古学の共同研究  執筆:准教授 佐々木崇徳  高大接続の重要性が高まる昨今、八戸工業大学工学部電気電子工学科(令和4年度より工学部電気電子通信工学コース)においては2016年より継続的に、グループ校でもある八戸h工業大学第一高等学校と共同での研究活動を進めてきています。高大接続自体の方法としてはいくつか提案実施されていますが、多くは大学教員による講義や何らかの講座・体験学習への参加などが多いという印象があります。その一方で本学科における連携は、高校生が課題研究の一環として、大学の研究室の研究に参画し、実際に実験や検証、データの取得などに携わるという形態を取っています。  今年度においても引き続き実施され、高校生が興味を持った4テーマについて実施されました。そのうちの1テーマである宇宙考古学分野について、衛星画像の解析による古代城館の堀検出手法の検証・改良についてご紹介いたします。  現在筆者らのグループでは、衛星画像を用いて森林などに覆われて上空写真等から判別が困難な古代城館を、様々な開析手法を組み合わせることで、人工衛星から分析するための手法の開発に取り組んでいます。そのなかでも最近では多くの城館に共通して存在している「堀」についての検出手法の確立を目指して研究を進めています。ただ、実際の古代城館の跡は全て同じというわけでも無く、できるだけ共通の分析手法を作り上げるためには多くのケーススタディとそのフィードバックによる改良が必要です。  今回の研究活動についても、そのケーススタディを中心に行われました。大学や高校の周辺地域(八戸市、五戸町、階上町など)に点在する古代の城館跡について、人工衛星の画像を使って堀の検出処理を行いました。また高校生の解析結果を受けて、実際に現地に赴き確認した上で、更に検出できなかったケースを検出できるように改良を施すなど、大きな成果が得られました。  今年度の実施においては、新型コロナウィルス感染症対策の観点から今年度はリモートでの開催となりましたが、可能な限り実際の研究と同様の環境を構築するため、解析プログラムのオンライン化、現地実踏調査の映像配信など、研究室のメンバー総出で準備を行いました。  こうした活動は高校生にとっては学校で学ぶことに、更に先があることを知る機会にもなると思いますし、関わる大学生・大学院生についてもベースの異なるメンバーとの共同研究という、通常の卒業研究ではなかなか味わえない体験や、その準備のために自信の研究を見直し、整理するなど双方にとって大きなメリットがあると考えられます。 今後もこれらの活動を等して、様々な学びを、高校生も大学生にも提供して行きたいと考えています。 [...]
2022-01-04E-letter / 研究関連 / 記事パソコンに追い着いた携帯電話 執筆:准教授 神原利彦  「アップルシリコン」を御存知だろうか?アップル(Apple)とは林檎を意味する英語だが、その果物の林檎のことではない。米アップルコンピュータという会社のことを指す。故スティーブ・ジョブス氏が創設したベンチャー企業である。この会社から連想するものと言えば、パソコンのMac(Macintosh)シリーズだったり、タブレットPCのiPad、スマートフォンのiPhoneなどであろう。もちろん、本学の学生も多くがiPhoneユーザーだ。「アップルシリコン」というのは、そのアップルという会社が開発し製造販売しているCPU(コンピュータの中心となるICチップ)のことで、2010年にその開発が始まった。当初は自社のiPhoneにだけ搭載されていたCPUだったが、年月とともに進化していき、とうとうMacやiPadにまで搭載されるほど高性能になったのだ。そういうニュースが流れたのが、2020年の10月頃である。図1のような報道画像を見られた方も多いだろう。 図1:アップルシリコンM1の報道画像  筆者が初めて携帯電話を入手したのは2000年のことである。セルラーのD205Sという機種(SONY製:図2)であった。ディスプレイもモノクロで、解像度が低い上に応答速度も遅く、ボタンを押してもなかなか反応してくれない画面にイライラさせられたものだ。当時の携帯電話といえば、このように「小型、省電力だが低性能」というイメージであった。電波の入りが悪くて、伸縮式のロッドアンテナをいちいち長く伸ばして通話したものである。サブメニューにスケジュール管理帳などいうアプリも搭載していたが、戦力にならないほど非力だった。 図2:携帯電話(セルラーD205S)  かたや、パソコンといえばノートパソコンの小型化が進んだとはいえ、かさばる大きさで電気も食った。そもそもバッテリーが重くかさばる原因なので、「大型、大電力消費だが高性能」というイメージであった。このように、携帯電話とパソコンには大きな違いが確かに存在した。だが、そんなイメージは「アップルシリコンをパソコンに搭載」の発表で大きく覆された。いわば、(低性能なはずの)携帯電話が(高性能な)パソコンに追い着いたのである。  スマートフォンのもう一つの陣営:Androidの方はどうだろうか?日本の家電メーカー数社が製造・販売しているが、CPUはQualcom社製のものを採用している機種が多いようだ。こちらは、Qualcom社が性能を進化させて、やがてWindowsパソコンやChromebookなどに搭載される…なんてことは、今のところ起きそうにない。相変わらず、インテルとAMDの影響力が強いからだが。ただ、アップルに出来たことがQualcomに出来ないはずがない…という発想はできる。Qualcomの今後に期待したい。  かつて、嶋正利さんがZ80CPUを開発しておられた頃は、集積回路といえば、日本人や日本企業の得意分野として広く認められていたのに、今や日本メーカーは外国産技術を受け入れるだけの立場に甘んじているのが残念でならない。確かに、デファクト・スタンダードの壁が大きく立ちはだかっている現状は理解できるのだが。学生実験でいまだに使っているZ80CPU(図3)を見ながら、強くそう思う。技術だけ良くってもダメ。デファクト・スタンダードを打ち破る「アップルシリコン」のような戦略と発想が必要だ。 図3:学生実験で使っているZ80CPUボード一式  本学に限った話ではないが、大学の設備としてパソコンをずらっと大きな部屋に多数並べる時代ではなくなって来ている。今や、中学・高校の頃から個人用のタブレットPCを持ち歩き、情報教育に使う時代である。大学も変わって行かねばなるまい。本学でも、学生に「ノートパソコン必携を義務付ける」という指示をしているが、本当に必要なのか?スマホのCPU性能が既にパソコンに追い着いているというのに。それでも、スマホとは別にパソコンを用意せねばならないのか?…と感じるのは筆者だけではないだろう。例えば、HDMI接続の大画面ディスプレイとBluetoothキーボードだけを大きな部屋のたくさんの席にそれぞれ用意して、着席した学生がスマホとそれらをつないで、ノートパソコンっぽい使い方ができる時代が既に来ている気がする。  アップルの真似をしろとは言わないが、これからの日本企業には、「スパコンに追い着いた携帯電話」の開発・製造を期待したい。スパコン「富嶽」の性能が世界一位だと自慢するのもいいが、「富嶽」の性能が掌のスマホに収まっている…となる将来の方がもっと楽しいではないか。 [...]
2021-12-15E-letter / 記事電柱が街から消える!? 執筆:教授 信山克義  2021年12月1日、栃木県真岡市では突風によりコンクリート製の「電柱」が折れ1)、北海道十勝管内では強風の影響で「電柱」65本が破損するといった被害が発生しました2)。「電柱」に乗用車が衝突する痛ましい事故は頻繁に発生しています3-5)。「電柱」は家庭や工場などに電気を送ったり、電話やインターネットの回線などを届ける重要な役割を果たしていますが6)、上述のとおり電柱があることで私たちの安全や快適な暮らしに支障をきたすことがあります。国土交通省では、「景観・観光」、「安全・快適」、「防災」の3つの観点から『無電柱化』を推進しており7-9)、青森県においても無電柱化推進計画を策定しています10)。『無電柱化』は世界各国で行われており、ロンドンやパリの無電柱化率は100%、香港や台北、シンガポールでは90%~100%となっていますが、日本では最も普及している東京23区でも10%弱、青森県においては1%弱となっています7)。毎年3,500万人の観光客が訪れる青森県としては、「景観・観光」の観点から『無電柱化』を求める声が高まっており10)、五所川原市では電線類の地中化を行うことで、巨大ねぷた「五所川原立佞武多」の運行が約一世紀ぶりに復活しました8)。八戸市では、鷹匠小路線(六日町~鷹匠小路)の道路幅員が6mで歩道もなく、地上機器の設置場所を確保することが困難であったため、「安全・快適」の観点から『無電柱化』が行われました8)。『無電柱化』は「防災」の観点からも有効であり、阪神淡路大震災や東日本大震災において架空線より地中線の方が圧倒的に地震に強いことが確認されています7-9)。電柱が街から消えれば、電線にとまった鳥からのフン害についても解消されるかもしれません。 日テレNEWS24:ニュース:「栃木で“突風”屋根飛ばされ…電柱折れる」,2021/12/1(水)10:20配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/21d33ee50f0645745499b925aa8a94ecd46ff786 HTB北海道ニュース:「暴風による北海道の大規模停電 2日夜遅くに全面復旧」,2021/12/2(木)23:30配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/4a8fbce1c42eededce7303708ffd926570605141 北日本放送:「電柱に車衝突 同乗の9歳男児意識不明」,2021/11/28(日)11:41配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/36c1630e3365bb7f8505609e42ed4936593e5c44 読売新聞:「電柱に衝突した乗用車、助手席の25歳死亡…運転手は救護せず逃走か」,2021/11/25(木)11:47配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/62bdc0a162131cc61881c6fd7ff65b20a31f25d9 FNNプライムオンライン:「トラックが電柱なぎ倒し 深夜の国道1号線で“大迷惑” 電線垂れて3時間通行止め 神奈川・藤沢市」,2021/11/23(火)11:21配信, https://news.yahoo.co.jp/articles/4bd1ffb8bf6bbc2558c0b25a092b194c9a2da583 関西電力:「おとなも学べる 教えて!かんでん 電柱のナゾ!?」, https://www.kepco.co.jp/brand/for_kids/teach/2018_11/ 国土交通省:「無電柱化の推進」,https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/index.html 国土交通省東北地方整備局道路部:「無電柱化の推進」, https://www.thr.mlit.go.jp/road/sesaku/denchu/htdocs/# 特定非営利活動法人電線のない街づくり支援ネットワーク, https://nponpc.net/ 青森県:「青森県無電柱化推進計画の策定について」,https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kendo/doro/mudensuishin_00.html [...]
2021-12-01E-letter / 記事構造・不安定性・ゆらぎ 執筆:教授 川本清  2021年のノーベル物理学賞は「複雑系の科学」に関連した3名が受賞した。地球気象のモデル化と温暖化予測に関連した受賞者2名のうち、日本では真鍋叔郎先生が話題となった。地球気候は複雑なものの一つといっていいだろう。最近の気象予報は数値計算アルゴリズムの進化もあり、降水の有無の的中率は向上し、最高気温予測の誤差は小さくなっているらしい。天気予報といえば外れるものの代名詞のように扱われていた時代もあるが、日々の雨や雪、最低気温の予報など、今では一定の信頼をもって日々過ごしているように思う。複雑なものをモデル化してその性質を解き明かし、信頼性の高い予測を可能にして発展したものは電気電子分野にもある。半導体は考えた通りに作った構造が考えた通りの機能を果たす。まさにバンドエンジニアリングの面目躍如であるが、近似的な取り扱いが可能な高純度・高規則度な基板を実現した結晶成長技術の賜物でもある。 しかし、また違った面では物質は複雑である。物質を構成する原子・電子はどれも同じで単純に思えるかもしれないが、それは膨大な数の原子で構成されており、その配列は完璧に規則的であるなどということはない。数の多さそのものが複雑さに結びついている。今年のノーベル物理学賞のもう1名の業績は、そのような多数のものが集まったときにあらわれる無秩序とゆらぎの関係に関する理論である。詳細の解説は紙幅に限りがあってできないということにしておくが、物質中の原子スケールから宇宙空間の天体スケールまでにも成り立つ普遍性を明らかにしたという。その理論は多数の鳥や魚の群れが作り出すパターンや、デジタルデータを原子分子になぞらえて扱うことで情報科学にも適用できるという。抽象化されたモデルから眺めると、スケールの異なる現象に共通する事象が見出されるというのだから、まさに普遍的だ。 モデル化というのは複雑な対象の中から本質とそうでないものを見極め、理解可能な形に表現しなおす作業といえるだろう。現実の世界を離れ、現象を抽象化しているともいえる。具体的には数式で表され計算機上にプログラミングされていったりするわけだ。数式といった段階で“複雑”になる向きも多いが、それは人が作った表現形式で書き表されている。まったく言語化されていない見たままの複雑な事象より数式化されたモデルは単純化が進んでいる。自然現象に限ることなく、身近にあるたくさんの不思議を説明する仮説を考えて数理モデルをつくってみよう。いずれ複雑な世間の深淵を覗けるかもしれない。  https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2021/summary/ 日経クロステック「なぜ精度が上がったのか、天気予報の最新アルゴリズム」,2019-01-11,https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00321/121000007/ 日本物理学会2021年ノーベル賞解説,https://www.jps.or.jp/public/2021nobel1.php 群泳するイワシ(仙台うみの杜水族館) [...]
2021-11-16E-letter / 記事教員免許更新制度の「廃止」問題の行方 執筆:教授 松浦勉  この夏の7月から8月にかけて、安倍晋三政権が導入を強行実施するための法整備を行った「教員免許更新制度」について、文部科学省がその「廃止」の検討に入ったと、全国紙をはじめとするメディアが報じた。報道によると、7月に萩生田光一文科大臣が中教審に「廃止」を検討するように指示し、8月後半と9月末には、「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会教員免許更新制小委員会の「審議のまとめ」なるものが出されている。メディアの報道を見てみよう。たとえば、日本経済新聞は、8月23日づけで「教員免許更新制、23年にも廃止、指導力の向上なお課題」の見出しをつけて、今年度の通常国会への制度の廃止のための教育職員免許法改正案の提出→最速での23年度の更新制の廃止という「見通し」を示した。また、更新制度に代わる新たな制度設計については、文科省が「自治体や大学……と連携し、教員が資質向上のために学び続けられる制度」の検討に入ると書いた。  もともと、3月12日の文科相の諮問段階では、諮問の五つの検討課題の③に「教員免許得更新制の抜本的な見直し」とあったのであり、廃止ではなかった。すでに、免許更新制の数多の「弊害」だけは繰り返し指摘されていた。これが「廃止」の検討に発展したのは、次の二つの要因が無視できない。一つは、文科省による現職教員の更新制に関するアンケートにたいして、教員が全体としてこの制度にノーを突きつけたからである。これは具体的なデータで確認されている。もう一つは、文科省が3月末に、「♯教師のバトン」プロジェクトを立ち上げ、現職教員の生の声に耳を傾けようとしたことが、まったく裏目にでたことである。教職の「専門家」である現職の教員たちに教職の魅力をたずねたところ、魅力どころか、勤務する職場の「ブラック学校」化の実態が次々と告発され、「炎上」してしまったのである。10月24日づけの朝日新聞は、こうした事態を「♯教師のバトン すれ違い」と報じた。  しかし、こうした現職教員の声は、文科省サイドの人びとには十分に届かなかった。  おそらく中教審が出す結論は、更新制の「発展的解消」とされる、次の二つの施策が主要な柱となるシステムであろう。第1は、教員全体の研修履歴の記録と管理を、都道府県教育委員会に、一元的に統括させようという施策である。教員にも、子どもたちと同様に「主体的・対話的な深い学び」が必要で、またそれは一人一人の教員に「最適な学び」でなければならない、と「審議のまとめ」案はいうが、こうした学びないし自己研修が実質的に保障される条件は何もない。  もう一つは、第6回の「審議のまとめ」案が示すような、「必ずしも主体性を有しない教師に対する対応」として、中教審が文科省サイドに、強権的で具体的なガイドラインの作成をもとめている施策である。これについて、前述の産経新聞は、肯定的に報じていた。    「審議のまとめ」案の20ページには、以下の記述がある。   (都道府県教委が期待する研修の成果をあげていない教員に対しては、)服務管理件者又は学校監督者の職務命令に基づき研修を受講させる必要がある。万が一職務命令に従わないような事例が生じた場合は、地方公務員法……に規定する懲戒処分の要件、……に当たり得ることから、(任命権者は、事案に応じて必要な措置を講じる必要がある。)    日本の社会では、高度の専門性を要求される教職の「専門家」は21世紀の現在においても、依然としてその多様な高い専門性を無視され、せいぜいデリゲンチャとみなされ、管理と統制の対象となっている。それを如実に証明してみせたのが、文科相に意を受けた中教審小委員会を舞台とした教員免許更新制度の「廃止」問題めぐる審議であろう。教員は、どんなに高度であっても、たんなる専門的な知識や技術を習得しただけでは、その職務を全うすることはできないのであって、そのため、かつて佐藤学が強調したように、「反省的実践家」としての力量が求められ続けているのである。  最後に、半世紀以上も前の1966年に、ユネスコとILOが共同で加盟各国に勧告した、「教員の地位に関する勧告」を紹介したておきたい。教員が専門職であるとすれば、それに相応しい研修とは何かが、端的にして指摘されている。   5 教育の仕事は、専門職とみなされるものとする。教育の仕事は、きびしい不断の研究をとおして獲得され、かつ、維持される専門的知識および特別の技能を教員に要求する公共の役務(公務労働…松浦)の一形態であり、また、教員が受け持つ児童・生徒の教育および福祉に対する個人および(教員集団としての)共同の責任感を要求するものである。       ユネスコ・ILO特別政府間会議「教員の地位に関する勧告」(1966.10.5) Ⅲ 指導原則 5                               (2021.11.15) [...]
2021-11-04E-letter / 記事今、系外惑星探査が熱い 執筆:教授 石山俊彦  逆上がりや自転車乗りなど、それまでできなかった事がある日突然できるようになることがある。本小論の読者にも、そのような経験があるだろう。天文学の世界でも、系外惑星探査は似たような事例である。 夜空を見上げると無数の星が輝いている。これらは、大部分が太陽と同じ恒星である。したがって、地球のように恒星の周りを公転する惑星(系外惑星と呼ぶ)があっても不思議では無い。我々が住む太陽系も、水星から海王星まで8個の惑星が公転している。類推すれば太陽以外の恒星も惑星を伴っていることは十分に考えられることだ。 系外惑星探査は1940年代頃から始められたが、最初に確認された系外惑星は1990年代の前半であった。その後、続けざまに系外惑星は発見されることとなった。現在では、系外惑星は3500個ほどが確認されている(候補を含めると、7000個と言われている)。また、系外惑星の発見・確認に貢献した2名の学者が2019年度のノーベル物理学賞に輝いた。 それでは、90年代以降に系外惑星探査が活発になった理由はなんだろう?理由のひとつとして、近年になって急速に観測装置の巨大化や高精度化が進んだこと、さらにはケプラー宇宙望遠鏡などの新たな観測手段が利用できるようになったことがあげられる。それにともない、観測技術も進歩し、地上からは観測できない暗い天体(系外惑星)も検出することができるようになった。 インターネットやコンピュータの発達が天文学に様々な利益をもたらしたことも影響しているだろう。天文学の世界では、新たな観測データは観測者グループによる利用のあとは、ネット上で公開される。これにより、世界中の研究者達が様々な視点やアイデアをもとに公開データを検討することで、新たな発見がもたらされるようになっている。 本小論の読者にとっても、コンピュータやインターネットを利用することで、遠隔地の研究施設や世界最大級の研究装置が利用できることは大きな魅力であろう。これからもコンピュータやインターネットを利用することで、世界的な研究設備によって得られたデータの公開利用が進んでいくと期待される。 [...]
2021-10-15E-letter / 記事科学技術を読む 執筆:教授 関秀廣  市内に八戸ブックセンターというこじんまりとした本屋さんがあります。珍しく八戸市の直営で専門書が主体となっており、「本のまち八戸」づくりの拠点の一役を担っています。八戸工大の書籍紹介コーナーもあり、5月から8月までは私の担当でした。そこでは、Fig.1に示した10冊の書籍を紹介させてもらいました。既に絶版となった書もあります。    私たちは工学に携わっていますが、科学的な知識をもってして技術を生み出し、社会へ還元していくのが仕事になります。その意味で自然の摂理を基に「こと」と「もの」に還元して社会へ浸透させていくのが科学技術と言えます。私は液晶ディスプレイに取り組んでいますが、日本の液晶産業は、わずか10年程度で世界のトップランナーとなりました。そこでは、様々な人と多くの技術の関わり合いがあり、発展の契機となってきました。実際にどのような要素があったのかを見出せないかを思っていました。    そうした中で出会った書籍、また、編集で携わった著述を紹介していますが、人との出会いと同様に、これまでの世界を知り、それを糧に新しい社会を作り上げていくダイナミズムを吸収できたのではと思っています。皆さん、秋の夜長、時には読書で過ごしましょう。 Fig. 1 科学技術と社会の関り合いを読む。 [...]
2021-10-04E-letter / 研究関連 / 記事半導体の発光 執筆:教授 石山武  発光ダイオードの材料には、半導体が使用されています。半導体にもさまざまな種類があり、光るか、光らないかで分けると、直接遷移型と間接遷移型という2種類に大別されます。発光ダイオードの材料として使用されるのは直接遷移型の半導体で、効率良く発光する半導体です。一方、間接遷移型半導体は発光効率が著しく低く、発光ダイオードなどへの応用には不向きです。電子デバイスの基盤材料であるシリコンは、この光らない間接遷移型半導体に分類されます。  現代社会では、高速・大容量の情報処理を可能にするデバイスが求められており、従来のシリコンによる電子デバイスから、光と電子デバイスの融合が期待されています。その大きなテーマの中の一つに、光らないシリコンを光らせる研究があります。例えば、シリコンの中に希土類元素を不純物として混入させて光らせる手法は、以前から研究されてきました。例えば、エルビウムという希土類元素をシリコンに混入させると、光ファイバー通信に適した赤外領域で発光します。(ただし、室温で強く発光させることが難しいのが難点です。) 図 シリコンに混入したエルビウムの赤外発光スペクトルの例 [...]