教材としてのアプリ作成

教材としてのアプリ作成

掲載日:令和5年2月28日

執筆:准教授 越田俊介

 今年度、高校生など外部の方々を対象として、筆者の専門分野であるディジタル信号処理に関する授業を何度か実施しました。ディジタル信号処理は計算機の数値演算を基にした技術であるため、コンピュータが不可欠です。そこで、授業を実施するにあたり、受講生がコンピュータを直に操作して信号処理を気軽に体験できるような教材として、信号の生成や雑音除去を実現するアプリを作成してみました。たとえば下図に示したアプリでは、2つの波を重ね合わせた信号を生成し、その時間波形とパワースペクトルをグラフ表示するとともに、音も出力します。なお筆者は研究にてMATLABを利用していますが、現在のバージョンのMATLABではアプリの開発環境が整っており、所望のアプリを容易に作成できます。
 コンピュータを利用した信号処理体験の授業の試みは以前から行われていましたが、筆者の知る限りでは、一昔前はアプリ利用ではなく信号処理のプログラム作成を主体としていたように思います。プログラム作成の実習は、プログラミングが得意な受講生に対しては有効ですが、プログラミングが未経験であったり苦手意識を持っていたりする受講生にとっては、信号処理体験の楽しみが半減してしまいます。また、信号処理を勉強する上では基礎理論の習得が非常に重要ですが、基礎理論の理解とプログラミングの両方を扱った実習の場合、基礎理論の理解が疎かになりやすいとも感じています。このような背景から、アプリの利用を主体とした実習は、基礎理論の理解へのハードルを下げる有効な方法の一つになり得ると思います。