E-letterNo16011「避雷針ではなく避雷導体とは?」

6 月24 日に行われた新設された津波避難施設の視察の続きです。八戸市では非常時の津波避難の施設として、サッカー場の整備が進んでおり、写真1 はその管理棟や夜間照明灯です。いずれも頭部には避雷針が設置され、建物を雷から保護しています。空気は電気を通すことはできません。しかしながら、1cm 当たり30万V 以上の電圧をかけると、電気を通さざるをえなくなってしまいます。この状態を絶縁破壊と言います。

雷雲と避雷針の間に大きな電位差が生じると、避雷針の先端部の電界が高まり、その部分の空気は絶縁破壊を起こし、「雷が落ちる」現象となります。電界とは1 クーロンという電荷に働く力のことを言います。このとき、避雷針は積極的に雷を起こし、雷雲の電荷を地中に流し、建物の損傷を防ぐ役目を果たしています。そうすると「雷を避ける針」という表現は、「建物への雷を避ける」という意味であり、避雷針自身は「雷を呼び寄せる」、いわば「導雷針」の働きをしていることになります。

写真2 は多賀城の津波避難タワーに設置されたロープのような避雷導体で、避雷針は使われていません。これは避雷針が点で防ぐのに対して、面で捉える方法です。写真のように屋根の周囲に避雷導体を設置して、何処に雷が落ちても、建物の中への影響を少なくするようにしています。なぜ、この方法を用いるのかというと、ヘリコプターが被災者を上空から緊急救助する際、避雷針があると接触してしまうなどの危険があるためとのことでした。色々な状況に対応するために新技術が編み出されています。


 

写真1 通常の避雷針(管理棟兼津波避難施設屋上) 多賀多目的運動場(サッカー場)の施設

写真1 通常の避雷針(管理棟兼津波避難施設屋上) 多賀多目的運動場(サッカー場)の施設

写真2 避雷導体(多賀地区津波避難タワー屋上)

写真2 避雷導体(多賀地区津波避難タワー屋上)

pdf版:2016_Letter_No11