ノイズ除去技術の習得のために

ノイズ除去技術の習得のために

執筆:准教授 越田俊介

 当方の研究室あるいはディジタル信号処理の授業に興味をもってくださる学生のほとんどは、ノイズ除去技術の習得に対して強い意欲を持っているように感じます。たとえば、「自分で録音した音声信号にノイズが混じっているので、ノイズを取り除く方法を身に着けたい」という相談を、学生からときどき受けます。

 ディジタル信号処理におけるノイズ除去の方法は非常にたくさんありますが、最も基本的な方法はディジタルフィルタです。それゆえに、ディジタルフィルタを自分自身で設計および実現できるようになれば、基礎的なノイズ除去技術を習得できたと言って良いと思います。

 そこで、「ディジタルフィルタを理解できるようになるためには、どのような勉強が必要になるのか」を把握することが、非常に重要なポイントになるのではないかと思います(というよりは、当方が本学に赴任して以降、このことをまず自分でしっかり考えた上で授業をやらなければならないと考えるようになりました)。もちろん大学では、学生自身が自発的に学習することが重要ですので、当方の個人的な考えとしては、やはりディジタル信号処理に関する良書を学生が自分で読み進めていって欲しいと思っており、それができれば、自ずとノイズ除去技術も修得できると考えています。しかしながら、自分で本を読んで勉強を進めていけるようになるためには、人にもよりますが一般的に高いハードルを乗り越えなければなりませんので、そのハードルを少しでも下げることが教員の役目の一つではないかと思っています。

 本題に戻りますが、今の自分としては、ディジタルフィルタおよびディジタル信号処理を理解するための最初の一歩は「正弦波を確実に理解すること」であると考えています。信号処理だけでなく電気の分野においても、交流を扱う上で正弦波の理解は必須となります。そして正弦波を理解するためには、正弦波の挙動を数式で書き表すことができるようになることが重要です。たとえば「50Hz・100Vの交流電圧」を数式ですぐ書けるようになることが、電気および信号処理では重要かつ必須のタスクになると思います。

 全ての学生が正弦波を理解・体得できるようになるためにどのような教え方をすれば良いかが、現在の自分の課題となっています。