高校生と大学生が宇宙考古学の共同研究

高校生と大学生が宇宙考古学の共同研究

 執筆:准教授 佐々木崇徳

 高大接続の重要性が高まる昨今、八戸工業大学工学部電気電子工学科(令和4年度より工学部電気電子通信工学コース)においては2016年より継続的に、グループ校でもある八戸h工業大学第一高等学校と共同での研究活動を進めてきています。高大接続自体の方法としてはいくつか提案実施されていますが、多くは大学教員による講義や何らかの講座・体験学習への参加などが多いという印象があります。その一方で本学科における連携は、高校生が課題研究の一環として、大学の研究室の研究に参画し、実際に実験や検証、データの取得などに携わるという形態を取っています。

 今年度においても引き続き実施され、高校生が興味を持った4テーマについて実施されました。
そのうちの1テーマである宇宙考古学分野について、衛星画像の解析による古代城館の堀検出手法の検証・改良についてご紹介いたします。

 現在筆者らのグループでは、衛星画像を用いて森林などに覆われて上空写真等から判別が困難な古代城館を、様々な開析手法を組み合わせることで、人工衛星から分析するための手法の開発に取り組んでいます。そのなかでも最近では多くの城館に共通して存在している「堀」についての検出手法の確立を目指して研究を進めています。ただ、実際の古代城館の跡は全て同じというわけでも無く、できるだけ共通の分析手法を作り上げるためには多くのケーススタディとそのフィードバックによる改良が必要です。

 今回の研究活動についても、そのケーススタディを中心に行われました。大学や高校の周辺地域(八戸市、五戸町、階上町など)に点在する古代の城館跡について、人工衛星の画像を使って堀の検出処理を行いました。また高校生の解析結果を受けて、実際に現地に赴き確認した上で、更に検出できなかったケースを検出できるように改良を施すなど、大きな成果が得られました。

 今年度の実施においては、新型コロナウィルス感染症対策の観点から今年度はリモートでの開催となりましたが、可能な限り実際の研究と同様の環境を構築するため、解析プログラムのオンライン化、現地実踏調査の映像配信など、研究室のメンバー総出で準備を行いました。

 こうした活動は高校生にとっては学校で学ぶことに、更に先があることを知る機会にもなると思いますし、関わる大学生・大学院生についてもベースの異なるメンバーとの共同研究という、通常の卒業研究ではなかなか味わえない体験や、その準備のために自信の研究を見直し、整理するなど双方にとって大きなメリットがあると考えられます。
 今後もこれらの活動を等して、様々な学びを、高校生も大学生にも提供して行きたいと考えています。