E-letterNo16027「茶道」と「工学」

秋は各高校で祭典が目白押しです。その中、十和田工業高校で開催された第54 回十和工祭に訪問しました。電気・機械・建築など高校生の皆さんから案内説明してもらいましたが、なによりも皆さんが自分自身楽しみながら対応してくれるのには好感を持てました。十和工の駐車場にイタリアの自動車メーカーであるランボルギーニの車種ウラカンが停車しているのにはびっくりしました。排気量が5.2ℓで価格が2,500 万円程の高級車で、技術やデザインを駆使した逸品と言えます。工業高校の祭典に華を添えた興味深いものでした。

 一方で、目を引いたのが写真2 の茶道部のお茶でした。お客さんでごった返す中、お茶菓子と抹茶を頂戴し、束の間の静寂に心を落ち着けることができました。皆さんなかなかのお点前で、6 名の部員で活動しているとのことでした。「茶道」は伝統を守り続けること、「工学」は新しい技術を追い求めます。その点では「茶道」と「工学」とは相反した分野という見方もできます。

 アップル創業者スティーブ・ジョブズは「偉大な大工は、見えなくてもキャビネットの後ろにちゃちな木材を使ったりしない」として、製品の外装だけでなく、内部のマザーボードにまで美しさを求めました。周囲の人はやや辟易(へきえき)したところがあったそうですが、1 代でApple 社を世界のトップ企業にまで牽引した力量は突出しています。彼の考え方には日本の曹洞宗の開祖・道元の教えに通じる禅に魅せられたことが関係していると言われます。フランスでも「Zen(禅)」は「静かにする/落ち着く」といった意味のフランス語として使われています。日々様々な情報にさらされている私達ですが、時にはそれらを一切遮断して、「お茶」なり「禅」なり、自分を見つめ、呼吸を感じることが心身のリフレッシュにもつながるようです。


 

写真1 駐車していたランボルギーニ

写真1 駐車していたランボルギーニ

写真2 茶道部のお点前

写真2 茶道部のお点前

pdf版:2016_Letter_No27