天文学の効用

天文学の効用

執筆:教授 石山俊彦

  天文学は,少年少女が早い段階で触れることのできる理系の専門分野である。空を見上げれば,観測対象である天体が,そこにある。流星のような分野を観測対象に選べば,高価な天体望遠鏡などなくても観測できる。
 天文学が他の理系学問と比べて特徴的なのは,「誰でも,観測したい星を自由に観測できる。」ことにある。新天体の発見にみられるように,その気になれば,誰でも年令に関係なく専門性を突き詰められることも魅力のひとつであろう。
 筆者の大学生時代も,「元天文少年少女」が周囲に居て,よく見ると,子供の頃から培ってきた「科学的な態度」が,時折,研究などで顔を覗かせていた。大学卒業後,全ての「元天文少年少女」が天文学者になったわけではないものの,子供の頃から継続して科学に触れたことの経験値は,その後の人生で生きてきたように思う。
 科学研究が衰退していると言われる我が国の現状ではあるが,少年少女時代から天文学のような身近な学問に触れることも,理系復活への一歩につながるのではないか。