半導体の発光

半導体の発光

執筆:教授 石山武

 発光ダイオードの材料には、半導体が使用されています。半導体にもさまざまな種類があり、光るか、光らないかで分けると、直接遷移型と間接遷移型という2種類に大別されます。発光ダイオードの材料として使用されるのは直接遷移型の半導体で、効率良く発光する半導体です。一方、間接遷移型半導体は発光効率が著しく低く、発光ダイオードなどへの応用には不向きです。電子デバイスの基盤材料であるシリコンは、この光らない間接遷移型半導体に分類されます。

 現代社会では、高速・大容量の情報処理を可能にするデバイスが求められており、従来のシリコンによる電子デバイスから、光と電子デバイスの融合が期待されています。その大きなテーマの中の一つに、光らないシリコンを光らせる研究があります。例えば、シリコンの中に希土類元素を不純物として混入させて光らせる手法は、以前から研究されてきました。例えば、エルビウムという希土類元素をシリコンに混入させると、光ファイバー通信に適した赤外領域で発光します。(ただし、室温で強く発光させることが難しいのが難点です。)

図 シリコンに混入したエルビウムの
赤外発光スペクトルの例