点と点をつなぐことの意味

点と点をつなぐことの意味

執筆:教授 石山俊彦

「Connecting the dots(点と点をつなぐ)」という言葉を聞いたことがある人もいるだろう。スティーブ・ジョブズによるスタンフォード大学の卒業式でのスピーチに出てくる言葉である。要約すると、「将来を予想して、点(知識や経験など)と点をつなぐことはできない。後々の人生で振り返った時にしか、点と点をつなぐことはできない。今やっていることが、将来、自身の役に立つ(点と点がつながる)と信じて取り組みなさい。」という主旨である。ジョブズ自身の例だと、彼が大学でカリグラフ(文字芸術)に興味を持ったことがきっかけで、後に開発するマッキントッシュが多数のフォントを持つようになったことは有名なエピソードだ。

 我々は、ともすれば、「今やっていることが、どんな意味があるのか(本当に自分の役に立つのか)?」と考えてしまいがちである。ジョブズを見ると、紆余曲折だらけ、様々な成功と挫折に彩られた人生を送っている。それにもかかわらず、ある時期に経験した出来事が、後の彼の生き方に役立っていることがわかる。

 小職も企業で研究員をしていたときに、学会に参加するたびに、上司から「今回の学会発表を聞いて、何件の新しい研究テーマを思いついたか?自分は2件、思いついた。」などと鍛えられたことを思い出した。ジョブズが言うところの「将来」は、それほど、遠い先の話ではないのかもしれない。

 本学科でも、各学会と連携して、様々な講演会を実施している。講演会では、毎年、大学や企業で活躍している研究者・技術者の方に来ていただき、興味深い話をしていただいている。対象は主に3年生であるが、卒業研究中の4年生にとっても、自身の研究や企業・大学院に進んだときに役に立つ内容が多い。こうした講演を、興味が無いとか、バイトが忙しいとかの理由で聴講しないことは、もったいないことだと思う。この小論を読んでくださっている皆さんも、点と点をつなぐつもりで、こうした講演会に積極的に参加、できれば質問してはいかがだろうか。そこから、得られるものは少なくない筈だ。

 

※ジョブズによるスピーチはムック書籍の付属CDなどで聴取することができます。興味のある人は探してみてください。