光素子材料の特性改善の研究

実験・光素子材料の特性改善の研究

執筆:教授 石山武

 半導体を利用したLED照明やソーラーパネルは当たり前に目にするものとなりました。これらは電気電子工学分野では、発光素子、受光素子とも呼ばれ、発光素子は電気を光へ、受光素子は光を電気へ変換します。これらの変換は、半導体のpn接合を介して行われますが、その際に生じる損失をなるべく減らし、変換効率を高くすることが素子の高性能化、省エネルギーへとつながります。

 変換効率を下げてしまう要因の一つに、半導体中に存在する欠陥が挙げられます。もう少し詳しく述べますと、半導体は原子が規則正しく並んだ状態でできているのですが、その原子の並びが乱れた部分が欠陥となります。この欠陥は電子を捕まえ、電気や光のエネルギーを熱に換えてしまいます。そのため、半導体中の欠陥を減らすために、様々な研究開発が行われています。例えば、半導体の成長法を工夫することで、大幅に欠陥を減らすことができます。図は酸化物半導体の一つである酸化亜鉛の発光に関するものですが、成長条件を変えることで、それまで微弱でほとんど観測できなかった、波長(横軸)が380 nm付近の発光(左端の矢印)が非常に強くなます。このように、うまく欠陥を消すことができれば、与えられたエネルギーが欠陥で熱として消費されることなく有効に変換されるようになります。