電気の世界にも「コロナ」は存在する!?

電気の世界にも「コロナ」は存在する!?

執筆:教授 信山克義

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大の長期化に備えて、私たちは「新しい生活様式」の実践と継続に取り組むよう求められています。実は電気の世界でも「コロナ」が付く現象が存在します。それは「コロナ放電」と言って、針先のような局所に高い電圧を加えると部分的に絶縁が破壊されて生じる発光放電現象です。この発光が皆既日食のとき観測される太陽のコロナ(王冠という意味)に似ていることから、コロナ放電と名付けられました。

 コロナ放電は、電気の世界で悪影響を及ぼすことがあります。例えば、台風の季節になると「塩害」によって発生する停電事故が問題となりますが、これはコロナ放電が大きく関与しています。発電所で発電した電気は、鉄塔に張られた高圧送電線(裸電線)を流れ、電柱に張られた配電線(絶縁電線)を流れて各家庭に送られます。この鉄塔や電柱には白い磁器製の碍子(がいし)が付いており、鉄塔や電柱と電線を絶縁するために用いられています。台風によって吹き上げられた海水の塩分が強風に流されて碍子に付着すると、碍子の絶縁性が低下してコロナ放電が発生し、碍子が破損されて停電が起こりやすくなってしまいます。また、配電線の電線被膜やカバーなどの樹脂に塩分が付着すると、コロナ放電が発生して焼損してしまいます。よって、塩害による停電を防ぐための対策が取られています。

 一方で、電気の世界ではコロナ放電をうまく活用しています。コロナ放電の周囲ではイオンが生成されるため、静電破壊や機器の誤動作などのトラブルの原因となる静電気をイオンで中和し、除電や除塵を行なうイオナイザ(静電気除去器・除電器)として利用されています。また、物質の表面を活性化する作用があるため、親水性や接着性、蒸着特性などを向上させる表面改質装置にもコロナ放電が用いられています。

 このように、電気の世界でも「ウィズコロナ(withコロナ)」であり、コロナ放電の発生を抑えたり、コロナ放電を活用しながら共存、共生しています。