八戸の電気のルーツを探る

八戸の電気のルーツを探る

執筆:講師 花田一磨

 本学・八戸工業大学が位置する青森県八戸市は北東北随一の工業都市であり、市内には東北電力初の火力発電所である八戸火力発電所があります。撤去されて久しい一号機が運転を開始したのは1958年ですが、これより前に八戸に発電所がなかったわけではありません。

 八戸に最初に電気の灯りが灯ったのは明治末の1911年。八戸水力電気が新井田川の水を利用し是川の白蛇久保に建設した是川発電所(水力)によるものでした。当時、青森県内にはすでに青森電燈と弘前電燈が電気事業を行っていましたが、この2社が最初に火力発電所を建設したのちに水力発電所を建設していたのに対して、八戸水力電気は最初から水力発電所を建設したことは特徴的だったようです(なお、1929年には電力需要増に対応するため吹上に吹上火力発電所を建設しています)。八戸水力電気はその後、発電はすでに停止しているものの旧島守発電所保存公園として残っている島守発電所(水力)や三戸の小中島発電所、岩手の福岡発電所を建設しています。

 気候変動問題への対応として再生可能エネルギーの利用がまだまだ求められている昨今です。電力需要の規模はかつてとは比較にならないほど大きくなっていますが、私たちが住む町の電気の始まりが再生可能エネルギーの一つである水力発電が始まりだと知ると、その可能性に期待してみたくなりませんか?