藤田成隆「40年間を振り返って」

八戸工業大学同窓会報第22号掲載記事(2016年8月発行)

40年間を振り返って
 名誉教授・元学長 藤田 成隆 先生(平成28年3月退職)

藤田先生

 2016年3月31日をもって、学長任期満了につき退職いたしました。思えば、1975年10月、縁あって八戸工業大学 工学部電気工学科にお世話になり、以来約40年間勤めてきました。また、勤務した翌年の3月には、工学部3学科の1期生の卒業式に立ち会うことができまし た。約40年の間に、ご指導、ご支援、ご協力をいただいた多くの関係者の皆さんにこの紙面を借りて厚く感謝申し上げます。

 ご指導・ご助言いただいた国内外の大学教授の中で最も尊敬する当時秋田大学鉱山学部長の能登文敏先生から、「大学の教職 にあずかる者には、自分の高い目標に向かって研鑽を積むと同時に、周囲の者を立派に育てる義務がある」と言われたことがあります。これまでこの言葉を時々 思い出しながら教育研究に従事し、十分ではないにしても、曲がりなりにも実行できたと思っています。

 さて、過去を振り返ってみると、理由はともかくもすぐに幾つかを思い出します。例えば、学科カリキュラムの大改正、関 東・東北地域での学生募集活動、文部科学省の大型教育研究設備整備事業に採択、米国クラークン大学にて大学院生研究指導、大学院設置申請にかかわる業務、 出席システムと証明書発行機の導入、学科名称変更、日本技術者教育認定機構(JABEE)による学科プログラム認定、文部科学省と経済産業省の教育研究プ ロジェクトに採択、新疆大学と瀋陽工業大学からの2名の大学院留学生指導、研究室より4名の博士課程修了者を輩出、社会連携学術推進室・基礎教育研究セン ターへの名称変更、研究所の名称変更、日本高等教育評価機構(JIHEE)による大学認定、海外大学・機構・自治体・団体との連携協定締結、青森県航空宇 宙産業研究会とあおもりデジタルアーカイブ・コンソーシアム(ADAC)の設立などです。

 ここ数年間では、東日本大震災直後に立ち上げた防災技術社会システム研究センターが地域の復旧・復興の支援活動を実施 し、それが後に文部科学省事業として採択され、この3月までの5年間成果を挙げ、社会貢献してきました。また、文部科学省の大学教育再生加速プログラム事 業に採択され、学生の弱点を詳細に分析し、それを強化する新たな教育プログラムの策定がスタートしました。さらには、(国研)海洋研究開発機構と連携協定 を締結し、海洋資源開発技術者の育成事業の一部が動き始めました。

 その一方で、今でも忘れられない悲しい出来事としては、帰省中の学生1名が東日本大震災で犠牲になったこと、卒業生やそ の家族が犠牲になったことです。震災直後から大学として被災者支援活動、ボランティア活動を始め、様々な支援活動を実施し、また同窓会東北支部の集う会に は大学管理職全員が出席し、卒業生の皆さんの話を聞き励ましたりしました。当時執筆依頼された東奥日報の経済面の連載記事33回中、震災の内容を含むもの が三分の一程度、デーリー東北の場合は連載記事11回中、半分程度と意識して被災状況や復旧・復興、減災・防災に関連した内容を記述した記憶があります。

 喜ばしい話としては、卒業生の活躍に対して表彰する制度を新設し、規程を整備する前を含めるとこれまで5名の卒業生を表 彰いたしました。水交会からは福士信雄社長(電気工学科、昭和51年度卒)が工業技術貢献賞、佐藤正一社長(電気工学科、昭和56年度卒)が地域産業貢献 賞を受賞しています。

 2011年の「蒼穹」に2025年までの未来予測の一部を記載しましたが、2016年時点で合致するものが多くあります。社会の変化を敏感に予測し、必要とされるものが何かを根拠をもって判断し、目的に向かって迅速かつ勇気をもって行動していくことが重要と考えます。

 最後に、福士信雄同窓会会長、淺利能之同副会長(電気工学科、昭和51年度卒)、岩本明佳水交会会長(電気工学科、昭和57年度卒)を始め、学科卒業生の皆さんの一層のご活躍と水交会のますますのご発展を祈念いたします。