E-letterNo16023「清く、正しく」

夏休みに入った08 月10 日(水)に八戸工業大学多目的ホールにおいて、東北大学羽田貴史教授をお招きして「大学で研究倫理体制をどう構築するか -東北大学の取り組みと課題-」と題したお話しを頂きました。先生は東北大学で研究倫理に関する教職員の意識向上に取り組んでいらっしゃいます。お話の中で、ある大学の分子細胞生物学のK 教授とその指導下にあった助教ら11 名が「研究不正」に関わった例が説明されました。16 年間の論文165 報の中、33 報が不正と判定されたとの事です。なぜ「研究不正」が起こなわれたのでしょうか?研究資金の獲得などのため国際的に著名な学術雑誌への論文掲載をあまりにも重視し過ぎ、そのためのストーリーに合った実験結果を求める姿勢に甚だしい行き過ぎが生じ、組織的に捏造(ねつぞう)・改竄(かいざん)が行われたとのことでした。

一般に「倫理」は人として守るべき道のことで、道徳やモラル(moral)とも言われます。報道される研究費の不正使用はこれに当たります。それに対して「研究倫理」は研究規範(Research Ethics)と言われ、研究の考え方や規則を意味しています。これに基づくと、上記の「研究不正」には、捏造(ねつぞう)と改竄(かいざん)、そして盗用の3 つの行為が含まれています。捏造は実際にはありもしない事柄を、事実であるかのようにつくり上げることで、でっちあげです。また、改竄は書き直してしまうこと、そして、盗用は、他人のものを盗んで使うことです。

科学技術は、先人の築き上げた「智」に基づき、更に新しい知見を積み上げ、普遍的な新しい論理を生み出すことで発展を遂げてきました。その土台にほころびがあるとそれ以後の努力は無に帰してしまいます。事実が自分の仮説に合わないとき、仮説を立て直して、正しく事実を見つめる姿勢は根本的で不可欠なものです。電気電子システム学科では、4 年生になると卒業研究を通じて「研究倫理」の実践を行っています。


 

写真1 多目的ホールで聴講する教職員

写真1 多目的ホールで聴講する教職員

写真2 御講演戴いた東北大学東北大学羽田貴史教授

写真2 御講演戴いた東北大学東北大学羽田貴史教授

pdf版:2016_Letter_No23