E-letterNo16014「凝り性とたくみ」

6 月21 日(火)に高校と大学の教育を一貫とする活動の一つとして十和田工業高校を訪問する機会がありました。写真1 は十和田工生達が、ドラフター(drafter)を用いて家屋の設計をしている様子で、大変緻密な線に感心をしました。ドラフター(drafter)は製図台であり、T 定規、勾配定規、縮尺定規などの製図道具が一体となっています。「ドラフト」はラテン語の「引く」という言葉で、「線を引く」 という意味での「下書き」、「人と引き抜く」という意味での「野球ドラフト(新人選抜)」、「ビールの樽から引っ張り出した」ビールという意味での「ドラフトビール」というように意外に身近で用いられています。写真2 は高校生ものづくりコンテスト全国大会「電気工事部門」の東北地区ブロックで優勝した作品で廊下に展示されていたものです。金属の箱はアウトレットボックスと呼ばれ、配線の分岐、接続などに用いるものです。縦横整然とした感じを受けるのですが、担当された先生いわく、これでもまだ直せるところはありますとのことでした。「そこまでやるの?」と溜息をつきました。

素人からするとプロの人がする仕事をやりすぎじゃないの?凝りすぎだよ!と思うことがあります。「ものづくり」をすると、作り上げることが目的ですから、あるところまでできても色々なところのアラが気になり、ついつい細やかなところまで直したくなります。端から見ていると十分なのですが、作っている方は世間の求めるレベルを超えて自ずから限りを尽くしていくことになります。匠(たくみ)と言われる人達は究極を極め、新しい価値を作り上げることで評価されているのだと思います。こうした完全を求める意欲が、技術の進展には欠かせない要素となります。頑張れ高校生!


 

写真1 ドラフター(製図台)に取り組む十和田工生

写真1 ドラフター(製図台)に取り組む十和田工生

写真2 十和田工生が組み上げた端子箱

写真2 十和田工生が組み上げた端子箱

pdf版:2016_Letter_No14