「宇宙から」という視点

「宇宙から」という視点

執筆:准教授 佐々木崇徳

スプートニク1号

スプートニク1号

 人工衛星技術が登場して今年で62年になります。最初の人工衛星はロシア(当時はソビエト連邦)が1957年10月4日に打ち上げたスプートニク1号です。直径58cmの球体にアンテナがついた形をしており、衛星自体の温度情報を0.3秒ごとに地上に送信するという単純な物でしたが、地球の外から情報を送るという意味では十分にその役割を果たしました。

 今日では大小様々な人工衛星が4,000機以上も運用されおり、その目的は資源探査、環境観測、気象観測、軍事偵察、通信、航空管制など、多岐にわたります。

 人工衛星による宇宙からの視点の有用性が飛躍的に高まったのは1960年代から1970年代にかけてで、特に衛星画像の処理技術の登場により、様々な分野への応用が可能になりました。こうした人工衛星を用いた宇宙からの地上観測を「衛星リモートセンシング」と呼び、現在では温室効果ガスの観測のような、地球規模の環境観測などにも応用されています。

 その一方で、可視光から赤外光やマイクロ波までの幅広い光を撮影できる人工衛星の活用方法としては、まだまだ未着手の分野が多く、すでに運用されている人工衛星ですらも、後付けで活用方法を見いだせるという、面白い分野でもあります。そのため、大規模自然災害の解析や農業分野への応用など、より身近な分野においても宇宙からの目を活用できる可能性が秘められています。

 意外な応用分野の一つとして、歴史・考古学分野への応用研究も進められています。有名なところではエジプトのピラミッドに関する調査に人工衛星搭載の合成開口レーダーが用いられているケースがあります。マイクロ波が砂漠の砂を透過する性質を応用したもので、砂に埋もれた遺跡の発見に大いに威力を発揮しています。

 国内の遺跡においてもその活用が期待されており、大阪府にある大仙陵古墳(仁徳天皇陵)の植生指数による解析なども行われています。八戸工業大学では、青森・岩手・秋田の北東北三県領域に多く残る古代の城館跡について、城館特徴の解析手法の開発を進めています。ほとんどの城館が山林の中に埋もれており、上空から見てもなかなか把握しづらいのですが、人工衛星の特徴である目に見えない光を用いた解析を組み合わせることで、木々に覆われた堀の形状を明らかにすることに成功しています。

 このように宇宙からの視点は、私たちの生活や文化を支える新たな技術として様々な分野で活用されています。