他人ごとではない海洋プラスチック問題

他人ごとではない海洋プラスチック問題

執筆:教授 信山克義

 プラスチックは軽くて丈夫なため、食品容器や文具、洋服、レジャー用品、電気製品、情報機器、医療器具、自動車、建設資材など、私たちの生活のあらゆる場面で幅広く利用されています。しかし、プラスチックは使い捨てされることが多く、環境中に流出してしまうことが少なくありません。
 世界では少なくとも年間800万トン以上のプラスチックごみが海へ流出しているとされ、このまま対策を取らなければ、2050年には海洋プラスチックごみの量が魚の量を上回るとの試算もあります。海へ流出したプラスチックごみは、紫外線や波などの影響によって5mm以下に砕かれた粒子、いわゆる「マイクロプラスチック」となって漂流します。このマイクロプラスチックには、有害物質が含まれたり吸着したりするため、海の生態系への悪影響が指摘されています。
そのような中、環境省は2020年東京五輪までにプラスチック製レジ袋の無料配布を禁止する法令を新たに制定すると発表しました。また、2030年までにプラスチックの使用量を25%削減し、環境への影響が小さい「植物由来プラスチック」を現在の約50倍導入する目標を打ち出しています。
 さて、プラスチックは熱に強く電気を通しにくいため、絶縁電線などの絶縁体として幅広く使用されています。しかし、絶縁体として利用されているプラスチックは、架橋ポリエチレンやエポキシ樹脂などといった「石油由来プラスチック」であり、「植物由来プラスチック」への代替は進んでいません。したがって、電気電子工学に関する専門分野を学び、『絶縁体に適用できる植物由来プラスチック』を開発できれば、世界的な環境問題の解決に貢献することができます。