ナノサイズの「ものづくり」

ナノサイズの「ものづくり」

執筆:教授 石山武

 皆さんは「ものづくり」というと、どのような作業風景を思い浮かべるでしょうか。おそらく、材料を切ったり貼ったり、必要な部品を取り付けたり、などの作業を経て完成品へ向かっていくイメージを持つ方が多いと思います。では、一般的な工作用具などでは加工できない小さなものはどうやって作るのでしょうか。例えば、現在、目覚しい進展を遂げているナノテクノロジーの分野では、原子や分子を上手にコントロールしてナノメートルサイズ(1ナノメートルは10億分の1メートル)の「もの」あるいは「材料」を作る方法が研究されています。例えば図1は、電気化学的な手法で作った「ナノホールアレイ」と呼ばれるもので、直径数十ナノメートルの穴が並んでいます。これだけでも興味深いですが、この穴の中に別の電子材料を入れて、図1の部分を取り去れば、図2のようなナノサイズの棒状のもの、「ナノワイヤ」を作ることも可能になります。このような新しい電子材料を作ることも、電気電子工学における重要な一つの分野です。